池谷裕二、糸井重里『海馬:脳は疲れない』新潮文庫、2005年7月
■内容【個人的評価:★★★--】
◇ 頭がいいとは
- 頭がいいとか悪いとかということは、お勉強ができるとか、難しいことをよく知っているということとは違います。 「こまやかな気配り」「いざという時の適切な対応」「おもしろい遊びの発見」「的確な状況判断」・・・というようなことを自然にできる人がいると、周囲の人たちは「あの人は頭がいい」と言います。 いろんな場面で表現される「人の思い」は、頭のはたらきの結果です。 それは、すべて脳から生まれています。しかも、ほとんどすべての人間の脳のカは、二%しか使われていないのです。 頭をよくすることは、よく生きることにつながっているはずだ。 〈よりよく生きたい〉という望みが、〈より頭をよくしたい〉という思いを生む。そういう観点で、この本はつくられました。(14ページ)
◇ マンネリ化すると
- 大人はマンネリ化した気になってモノを見ているから、驚きや刺激が減ってしまう。 刺激が減るから、印象に残らずにまるで記憶力が落ちたかのような錯覚を抱くようになる。 ですから、脳の機能が低下しているかどうかということよりも、まわりの世界を新鮮に見ていられるかどうかということのほうを、ずっと気にしたほうがいいでしょう。 生きることに慣れてはいけないんです。慣れた瞬間から、まわりの世界はつまらないものに見えてしまう。 慣れていない子どものような視点で世界を見ていれば、大人の脳は想像以上に潜在能力を発揮するんですよ。(池谷)(25ページ)
◇頭が真っ白になったとき
- 自分が現時点で理解したことを話してみて、「そうじゃないです」と言われるための材料を出すとか、ともかく「二人の場をつくる」のが、僕の方法だと思うんです。 一方、その逆で、「頭が真っ白になった時」って、交流がとだえますよね。「ここはどこ?わたしは誰?」というか。 たとえば、バッターボックスに立った時に頭が真っ白になっている打者がいたら、それはきっと「ここはどこ?わたしは誰?」という状態です。 その場でどういうプレーをすればいいのか、サインをどう読めばいいのか、インプットもアウトプットもできないバッターになる。 つまり、状況というか、社会と交流ができなくなると、能力を発揮できない。(糸井)(40ページ)
◇ 企画を考えているときの態度:いったん忘れるか、考え続けるか
- 企画を考えている時なら、いったん忘れないで、考えたまま違うことをするのがいいと思う。 ぼくの場合、トイレに行ったりするのですけど。経験則だけど、「考え続けると、必ず答えが出る」と信じると、いつもいい結果になる。(78ページ)
◇ 第一章のまとめ
- 一 「もの忘れがひどい」はカン違い
二 脳の本質は、ものとものとを結びつけること
三 ストッパーをはずすと成長できる
四 三○歳を過ぎてから頭はよくなる
五 脳は疲れない
六 脳は刺激がないことに耐えられない
七 脳は、見たいものしか見ない (112-114ページ)
◇ 第二章のまとめ
- 一 脳の成長は非常に早い
ニ 脳は、わからないことがあるとウソをつく
三 マジックナンバー7
四 海馬は増やせる
五 旅は脳を鍛える
六 脳に逆らうことが、クリエイティブ
七 「これが、他人の悩みだったら・・・・・・」が、悩みを解決するコツ (186-189ページ)
◇ 第三章のまとめ
- 一 記憶力を増す食べものは、あることはある
二 やりはじめないと、やる気は出ない
三 寝ることで記憶が整理される
四 酸化することは腐ること
五 失恋や失敗が人をかしこくする
六 生命の危機が脳をはたらかせる
(230-235ページ)
◇ 忙しくても幸せ?
- しあわせなということで思い出したけど、ぽくの事務所で、年末で忙しくて忙 しくて仕方ない時期に、とくに大きな出来事もなかったのに「なぜか多幸感に満たさ れた」っていうスタッフがいたんです。それは、ちょっとわかるような気がしました。 (285ページ)
◇ 第四章のまとめ
- 一 受け手がコミュニケーションを磨く
二 センスは学べる
三 やりすぎてしまった人が天才
四 予想以上に脳は使い尽くせる
五 問題はひとつずつ解こう
六 言ってしまったことが未来を決める
七 他人とつながっている中で出た仮説には、意味がある (305-308ページ)
■読後感
脳は基本的に死滅していくものだが、海馬は、成長させることができる。絶えず新しい刺激を与え、枠にとらわれず考え続けることが海馬の成長を助けることとなる。
脳の特性をよく知ったうえで、クリエイティブな活動ができるよう心がけていく必要がある。