西野精治『スタンフォード式 最高の睡眠』サンマーク出版、2017年3月

 

スタンフォード式 最高の睡眠

スタンフォード式 最高の睡眠

 

 

■内容【個人的評価:★★★★-】

◇ 最高の睡眠とは何か、そして「90分の黄金法則」とは
  • 眠っている間の脳と体の働きをベストなものにして「睡眠の質」を徹底的に高め、最強の覚醒をつくり出す。 これこそが、本書でいう「最高の睡眠」である。 「睡眠の質」は「覚醒の質」に直結する。 その鍵が、本書でお伝えする「90分の黄金法則」だ。 レム・ノンレムの周期にかかわらず、睡眠の質は、眠り始めの90分で決まる。 「最初の90分」さえ質が良ければ、残りの睡眠も比例して良質になるのだ。 逆に最初の睡眠でつまずいてしまうと、どれだけ長く寝ても自律神経は乱れ、日中の活動を支えるホルモンの分泌にも狂いが生じる。 どんなに忙しくて時間がなくても、「最初の90分」をしっかり深く眠ることができれば、最高の睡眠がとれるといっていい。(中略)3章では、いよいよ最高の90分を得るためのメソッドが登場する。 キーワードは3つ「体温」と「脳」と「スイッチ」。(9~12ページ)
睡眠負債が脳と体に与えるダメージ
  • 睡眠負債は、脳にも体にもダメージを与える。 2002年にサンディエゴ大学のダニエル・F・クリプケ氏らが米国がん協会の協力を得て実施した100万人規模の調査では、アメリカ人の平均的な睡眠時間は7・5時間だった。 6年後、同じ100万人を追跡調査したところ、死亡率が一番低かったのは、平均値に近い7時間眠っている人たち。 彼らを基準にすると、それより短時間睡眠の人も、逆に長時間睡眠の人も、「6年後の死亡率が1・3倍高い」という結果が出ている。(41ページ)
◇ 夜スポットライトを浴びるオペラ歌手が眠るとき
  • 大量のアルコールは睡眠の質を下げるが、度数が強くても量が少なければその心配はない。もちろん体質もあるが、飲んですぐに眠ることで、最初の90分、しっかりと深く眠れているのだろう。ウォッカはアルコール度数が40度。なかには90度近いものもある強い酒だ。ワインはおよそ14度、ビールは5度程度だが、このようなアルコール度数の低い酒をだらだらと長時間飲むより、一口含んで目を閉じるのは入眠にはいいと思われる。(97ページ)
◇ 深部体温と皮膚温度の差が縮まっていることが鍵
  • 健康な人の場合、入眠前には手足が温かくなる。皮膚温度が上がって熱を放散し、深部体温を下げているのだ。このとき皮膚温度と深部体温の差は2℃以下に縮まっている。 つまり、スムーズな入眠に際しては深部体温と皮膚温度の差が縮まっていることが鍵なのだ。(114~115ージ)
◇寝る90分前には入浴を済ませよう
  • 0・5℃上がった深部体温が元に戻るまでの所要時間は90分。入浴前よりさらに下がっていくのはそれからだ。 つまり、寝る90分前に入浴をすませておけば、その後さらに深部体温が下がっていき、皮膚温度との差も縮まり、スムーズに入眠できるということだ。(132ページ)
◇ 眠りと寝具
  • 眠りというと寝具の話になり、どんなものがいいかという相談をよく受ける。 掛け布団より敷布団のほうが材質による違いは大きい。SCNラポOBの千葉仲太郎氏(現、慈恵医科大学)と私が調べたところ、沈み込むマットレスと、高反発のマットレスでは熱放散が大きく違ってくるので、入眠前半の深部体温が0・3℃も違う(高反発のほうが低い) というデータもある。 だが、どんなにいい寝具でも、室温を整えておかないとメリットを引き出せない。 日本は局所だけを温める文化だから、真冬でも部屋は寒い。「寒い部屋にコタツだけ」 あるいは「分厚い布団でエアコンなし」というのも珍しくないが、体温のスイッチとして効果的なのは快適な室温だ。(140ページ)
◇枕はそば殻がベスト
  • 通気性がいいと温度は下がるので、その意味では日本の「そば殻枕」も有効だと思われる。 アレルギー問題などもあるが、今は技術の発達で、そば殻と構造が同じプラスチックビーズも開発されている。(143ページ)
◇眠る前は単調で退屈なことで頭を使わなくする(脳のスイッチ)
  • ハイウェーで運転中に限くなる原因のひとつは、風景が変わらないことだ。 単調な状況だと頭を使わないから、脳は考えることをやめ、退屈して眠くなる。 モノトナス(単調な状態)にすることは、眠るための脳のスイッチである。 できる限りの「モノトナス」を意識しよう。 寝る前の娯楽は、頭を使わずにリラックスして楽しめるものがいい。 犯人が知りたくて夢中になるミステリーよりも退屈な本。 私ならアクション映画より落語が睡眠には向いている(モノトナスな映画は興行にならない)。 動画は気になると見入ってしまう。 「退屈」は普段はあまり歓迎されないが、睡眠にとっては「良き友」である。(148ページ)
◇ 起床のスイッチ
  • そこで私が推奨するのは、「起床のウインドウ(余白)」をつくる方法。 具体的には、アラームを2つの時間でセットするというものだ。 手順はごくシンプルで、仮に7時には絶対に起きなくてはいけないとしたら、6時40分と7時の2つの時間にアラームをセットする。 6時40分から7時までの20分を「起床のウインドウ」とするのだ。 朝方であれば、レム睡眠の時間は長くなっているし、20分前後で「ノンレム→レム」の切り替えがおこなわれている。 このタイミングをねらう作戦だ。(180ページ)
◇冷やしトマトで深部体温を下げる
  • 夜、ぐっすり眠るためには深部体温を下げる食品を夕食に取り入れるのも一案だ。 身近なところでいえば「冷やしトマト」。体を冷やす性質があるトマトをさらに冷やして食べれば体温は下がる。 レシピサイトではさまざまな趣向こらした「冷やしトマト」レシピが紹介されているので、便利だ。(199ページ)

■読後感

睡眠ということが若い時にはなんでもなかったことだったのに、ある年齢になるとなかなか難しいことに変わる。眠りは、人為的に制御できるものではなく、制御しようとすればするほど実現できないという悪循環が待っている。

しかし、さまざまな外的環境を整え、自然に眠りが訪れるのを待ちましょうというのがこの本で伝えていること。いくつかのテクニカルな紹介があるのでこれをまずは愚直に実行してみるということだろう。