大森彌『自治体職員論』良書普及会、1994年11月
自治体職員論―能力・人事・研修 (大森弥自治体行政学シリーズ)
- 作者: 大森弥
- 出版社/メーカー: 良書普及会
- 発売日: 1994/11
- メディア: 単行本
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- 自治体の意欲や能力の違いは地域の違いとなって現れる。事を組み、事を成し遂げようとする発意と気力、そして現実に事の成就を可能にする能力こそに違いがある。
- 自治体職員の任務遂行能力とは何か。それは広く自治体がなさなければならない活動全体のうち、特定の仕事を成し遂げることのできる、その人の総合力である。
- また、どんな職場でも言葉により自己表現できる能力は最低限備えておくべきである。
- 職務遂行能力には以下のようなものがある。
- 1.地域に関する認識能力
- 2.地域における課題の発見・調査能力
- 3.課題解決策の着想・関連情報の収集分析・企画立案
- 4.法令解釈、立論能力
- 5.折衝・交渉・根回し能力
- 6.質問・異論・批判への対処能力
- 7.実施施行コストを的確に見積もる能力
- 8.実施執行過程の運用管理能力
- 9.苦情・要望などの確認・対処能力
- 問題に気づいても言い出しにくい雰囲気があれば問題の共有化は起こりにくい。政策形成そのものの妨げとなってしまう。自由な発議を激励する職場討議を制度化することが不可欠である。
- 計画の策定に当たっては調査なければ計画なしという考え方が大切である。職員が自ら足を運び、聞き取りをして潜在的なニーズを発掘することである。(せっかく統計調査を行っていながら、これをきちんと地域の行政に役立てていない。)
- 法令があるから仕事をするのでなく、地域と住民のニーズがあって施策立案し仕事をするのである。地域を見抜く力が必要である。
- 職員は、集合型研修だけで育つのではなく、職場における具体的な仕事への取り組みを通じ大きくなる。
- 調査を委託で行ってしまうことは、自治体職員の能力の中で最も大切な能力を育てられなくなってしまう。
- ピーターの法則、責任を果たせる地位から果たせない地位に昇任した結果、無能となってしまうということがある。ポストが人を育てるというが、本人の自覚がなければ実現されない。
- 人事評価は職員の品定めではない。勤務の実情や強み・弱みの把握を通じてその職員の指導育成を行うためのものである。後者はともすればおろそかにされてきた。
- 個々の職員の潜在的能力を最大限に開発していくことを人事の目的の一つにする必要がある。また、職員は仕事を通じて育てるということが本筋である。
- 地方公務員法第39条に職員研修についての規定がある。この規定では、研修は「勤務能率の向上」と結び付けられており、また任命権者が行うこととなっている。これは、司法修習生や教育公務員と比べると狭い範囲のものに限定されてしまっており、個人の主体性に関する部分(自己啓発)への言及もない。また、職場内研修が大切であるという考え方も欠落してしまった。
- 研修とは、行政活動を行うに当たっての課題解決能力を高めるため、個々の職員の自己操縦能力と単位組織の知力を開発する管理業務である。
- 職場研修においては、どのような能力がその職場における業務を遂行するために必要なのかを明らかにし、現有職員の能力を見抜き、適切な研修機会を提供することが必要である。
- 自治体職員による政策研究も大いに行っていくべきではないか。
- 管理職でも一般職でも、自分の地域をひとまとまりのものとして考えず、与えられた職務の枠組に閉じこもり、行政の都合を地域のつながりや住民の都合に優先するような職員を小役人という。
- 現地や現場で住民と直に話し合い、批判や怒りにさらされることで職員は鍛えられる。
大局を見据え、課題を発見し施策を立案・実行できる職員でなければならない。そのためには、自己研鑽に務めるとともに、適切な職場内学習、仕事を行う中での能力開発が必要。
自ら調査することはすべての根本。現場に出て、何が課題なのか自らつかむことが重要。いっぽう現実を見るとそのような形での業務運営を行っている職員がどれほどいるか。仕事の中身ではなく仕事の手続きに忙殺されてしまっているのが現実である。