小林隆一『マニュアルのつくり方・生かし方』PHP研究所、2006年11月

マニュアルのつくり方・生かし方

マニュアルのつくり方・生かし方

■読むきっかけ

  • 現在の仕事の中で、利用者にわかりやすく伝えるための、また内部の事務処理を円滑に進めるためのマニュアルを作成しなければならない機会が多い
  • 標準的な備えておくべき仕様や分かりやすさにつながる工夫を知りたい

■内容【個人的評価:★★★−−】

  • 「マニュアル偏重は人の創意工夫を阻害したり、やる気を失わせたりする」といわれるが、使い方を誤らなければ組織の知識やノウハウを伝承するために効果的である。
  • 以下のようなマニュアル像を描きたい。
    • 1.押し付けや固定された教条にしない。合意に基づく決めごとであり、常時見直しが図られるべきもの。
    • 2.例外を許さない唯一無二のものではない。ものごとを要領よく、適当に、よい加減に対処するための指針となるもの。
    • 3.読者のやる気と創意工夫を促すもの。
    • 4.組織ぐるみの活用と各自の研鑽に役立てられるもの。

○第一章「マニュアル批判論に応える」

  • マニュアルとは「会社や組織の持つよき伝統、個々の社員の持つ知識やノウハウといった暗黙値を組織ぐるみで共有・伝承していくための形式知−文書(ドキュメント)−である」と定義する。狭義には以下のものがある。
    • 1.規範(マインド)マニュアル
    • 2.業務マニュアル
    • 3.取扱い・使用説明(ユーザーズ)マニュアル
    • 4.教育訓練(テキスト)マニュアル

○第二章「使えるマニュアルの条件」

  • マニュアルに完璧を求めるとかえってリリースの時期を誤ったりする。
  • 模倣はしない。作成目的や対象者が曖昧のまま見切り発車しても結局使ってもらえない。何のために、誰のために、は明確である必要がある。
  • 極力自力で作ること。
  • 熟練者が作ることは、かえって初心者にとって分かりづらいということにつながりやすい。

○第三章「マニュアルの種類」

  • ユーザーズマニュアルで操作を分かりやすく説明するためのポイントは以下の通り
    • 1.機能の階層化を図る
      • 知っておくべきこと
      • 知っていると便利なこと
    • 2.目標(またはあるべき姿)を明らかにする
    • 3.全体の流れを示す
    • 4.目標・操作の全体像と部分の関連を明らかにする
    • 5.状態→操作→状態の流れを示す
    • 6.類似の操作は相違点を明示する
    • 7.操作の結果を明示する
    • 8.操作の取消の仕方、障害対策を逐次伝える
  • マニュアルの文体は原則としてですます調を使う

○第四章「使えるマニュアルの作成手順」

  • 企画→調査・分析→設計→制作→導入・運用
  • 何のため、誰のためを明確にすることがもっとも重要。
  • 総花主義では失敗する。重点主義がよい。
  • マニュアルは目的や読者に応じて分冊化する。たとえば、処理手順・処理要領、システム操作説明書、帳票・フォーマット集といったように。
  • 設計では項目建てを行う。目的にかなった体裁となっているかが重要。

○第五章「機能分析」

  • 機能分析とは、マニュアル作成に当たり、対象業務や機能を大−中−小に分類・整理すること。仕事の棚卸のような性格を持つ。
  • 分類が出来上がったら、ついでそれぞれの業務概要と目的、対象範囲、達成基準・目標を明確にする。
  • ついで仕事の流れをフローチャート化する。

○第六章「マニュアル文章の書き方」

  • 分かりやすい文章。専門用語は注釈を入れること。
  • 解説、説明部分は「です・ます調」、操作手順、指示事項は「である」調が読みやすい。
  • 一つの文には一つのことだけを書く。また、結論から書く。
  • 等、思われるなどは使わない。

○第七章「図解表現で説明力アップ」

  • 文章も箇条書きで図解しよう。
  • 見出しの工夫も有効。

○第八章「パソコン活用のマニュアル作成」

  • ワードで見出しをつけることで階層化が図れる。

■読後感
とりわけ以下の点が現在のマニュアル作成作業において有効と認識
1.目的の明確化
2.構造化
3.全体の流れの図示
4.簡略化
5.箇条書き
6.結論を先に書く