山田雄一『ラインとスタッフ』講談社現代新書、1987年4月

ラインとスタッフ (講談社現代新書)

ラインとスタッフ (講談社現代新書)

■内容【個人的評価:★★★−−】

  • スタッフになることを憧れる若者が多いということだが、スタッフとは何かを良くわかっていない。また、ラインを活かすスタッフでなければならないということも忘れられている。
  • ラインとスタッフについての理解は、5年、10年のキャリアを経てはじめて認識が可能とも言える。

○プロローグ「自分を企業の中でどう位置づけるか」

  • やる気のある、前向きな専門スタッフを多く集めたライン・マネジャーは幸せである。
  • 会社が一定の規模を超えるとライン・マネジャーのみの力では管理できなくなってくる。社長が直接現場担当者に指示を出すといったようなことは、そうした規模ではできなくなり、信頼できる何人かに託さざるをえなくなる。
  • 近代国家のもと、下請けでなく自営できる組織をつくるため、ジェネラル・スタッフが形成されることとなった。

○1「企業のなかのラインとスタッフ」

  • アイゼンハワーは、軍隊の総司令官時代、タイプ用紙一枚以上の報告書は読まなかった。結論だけ分かれば良いという考え方である。理由は後からで良い、言い訳は聞きたくないというスタンスだった。
  • 仕事にあたってこのような姿勢で臨むのはすぐれたラインの長に多い。
  • 一人のリーダーが統括できる部下の数の最適数は8名である。なぜか分からないが、実験的に割り出されている。
  • ラインの仕事はその事業体の本来的な活動であるところの財貨やサービスの生産であるが、スタッフの仕事はライン活動を全体として認識し自己確認するとともにより賢い事業のすすめ方を専門性にのっとって判断することである。
  • ラインとスタッフに求められる能力は以下のとおりである。
    • 1.ライン・スタッフ共通→一般知識、現状認識力、組織化能力
    • 2.ライン→行動力、目標達成度、努力度
    • 3.スタッフ→専門知識、企画・計画力、積極性・向上心、責任感・見識
  • ラインに求められるのは実績であり、スタッフに求められるのは専門であるといったとらえ方もされる。

○2「決定する人と結論を出す人」

  • 自分をどうするのかといった問題がある(自我同一性)。
  • ラインとは決定する人であり、スタッフとはよく結論を導く人といった位置づけもできるだろう。
  • 会社が経営不振となり希望退職を募ったらどうするかというアンケートをとったところ、殉死型45.3%、茫然型15.0%ということで、身の処し方を決められない人が半数以上であった。
  • スタッフに求められるのは知識力ではなく思考力である。

○3「中枢的ラインと周辺的ライン」

  • ラインを担う人は行動する人であり、行動する人は悩まない人である。

○4「ブレーン・スタッフとサービス・スタッフ」

  • GMの二代目社長アルフレッド・スローンは事業部制を確立したが、また日本では松下幸之助である。松下の場合は、自身の体が強い方ではなく、個人の能力の限界をはっきり意識していた。

○5「本社スタッフと支社スタッフ」

  • スタッフ機能は、支社や工場のような現場で育成される部分が大きい。

○6「ライン・スタッフの未来」

  • スタッフに上昇への見通しが開け、ラインに実績向上への自身がみなぎれば両者のあつれきはおのずと解消する。そのもっとも顕著な例はQCサークル活動である。品質管理スタッフでなく現場の小集団がこれを担う。

○エピローグ「柔らかいシステム、柔らかい心を目ざして」

  • 日本人は、独創・段取りがうまい。
  • ラインとスタッフの協力は、仕事を通じて達成すべき共同の目標が何であり、解決すべき問題が何であるかを、相互に確認しあうところから始まる。

■読後感
ラインもスタッフ的な仕事をする中でラインの位置づけ自体がぼやけてしまってきている。
本来であれば経営中枢の意図を踏まえ、自分の権限で判断し、行動すべき存在であるが、総スタッフ化してしまっているのが現状か。