正高信男『ヒトはなぜ子育てに悩むのか』講談社現代新書、1995年12月
- 作者: 正高信男
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1995/12
- メディア: 新書
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- 子どもができたものの、どう接していいかわからないという質問をよくぶつけられる。迷うだけならよいが、自分や子どもに対する疑念にまで進展してしまう場合もある。
- 結論からいうと、育児不安は二つの要因が大きい。
- 1.子どもとの付き合い方がよくわからない大人が増えていること
- 2.女性の育児を支援する体制が欠如していること。とりわけ夫の無理解と高齢者の無力化による。
- 子どもとうまく付き合えない大人が増えている。端的には一人っ子で育った大人にその傾向が顕著である。子どもと話すときに、言葉が母親語になっているかどうかで付き合い方の上手い下手がわかる。母親語とは、語りの調子であり、特定の文化に固有の行動パターンである。
- 赤ちゃんは高く抑揚のある声に注意を向ける。また、周囲の大人の気分をきちんと感じ取っている。
- 18〜20歳の女子学生に子どもに絵本を読み聞かせる実験をしたところ、48%が母親語を使わなかった。とくに一人っ子は母親語を使わない。
- 生後四カ月の子どもを叱っても仕方ないのにどうすればよいか悩んだりしている。昔に比べ、子育てに助言してくれる人が圧倒的に少なくなってきた。
- 幼児虐待や、幼児が親になつかないということも起きている。
- 母性愛という言葉を初めて使ったのはジャン・ジャック・ルソーである。パリの凄惨な子育てをみて憤りを感じたようだ。ほったらかしの状態で、衛生状況も悪く、無事成長できる子どもは少なかった。『エミール』ではこと細かに子育ての方法が叙述されている。そして、子へ愛情を注ぐことは女の特権であると論じた。
- 祖父・祖母は本来的には子育てをサポートできる立場にある。しかし、現実には子育てのサポートをするのでなく、子どもを甘やかしてだめにするということで親と対立する存在となってしまっている。
- 大人がかわいいと思う子どものしぐさには何パターンかある。そしてかわいらしいと感じることが子どもとのコミュニケーションの基盤となっている。
- 子育ては子どものためではなく大人のためのものでもある。子どもを見つめることで自分をとらえなおすきっかけとなる。
- 子どもの汚い行動をやめさせることが正しいとは思われない。本人の楽しい行為を、大人の視点でやめさせてしまっている。
- 赤ちゃんが泣いているとき、うるさいなあと思うのでなく、なぜ泣くのだろうと考えてほしい。