七海友信『歌舞伎・文楽の見方が面白いほどわかる本』中経出版、2003年4月

歌舞伎・文楽の見方が面白いほどわかる本

歌舞伎・文楽の見方が面白いほどわかる本

■内容【個人的評価:★★★−−】
○序章「歌舞伎と文楽の世界へようこそ」

○第一章「歌舞伎 はじめの一歩」

  • 歌舞伎で「狂言」というのは「作品」というのに等しい。通し狂言(通しで上演する)、みどり狂言(いくつかの作品を部分的に上演する)など。
  • おすすめの席としては、花道突き当たりの鳥屋近くの席(出入りする役者をすぐそばで観られる。役者の風圧を感じたり、衣裳の豪華さも間近で観られる。)
  • また3階席の東側ろ列の15〜20番、B席だが、花道がすべて見渡せる。

○第二章「歌舞伎に行ってみよう」

  • 開演の30分前には着いておこう。乾燥するので飲み物があった方がいい。ドレスアップしてくる客もいるが普段着で大丈夫。
  • 玄関の両サイドにある絵看板を見て欲しい。右側が昼の部、左側が夜の部である。絵看板のうえに季節のデコレーションが施されている。
  • 幕が開いてから着席するのはレッドカード、一発退場もの。

○第三章「あなたもはまるその魅力」

  • 特徴的な魅力として「発散の美」ということがある。たとえば、『勧進帳』の幕切れ、弁慶の飛六方のような、手や足を激しく振り動かして花道を引っ込む豪快な演技などはそれに該当する。
  • 助六の傾城揚巻の役は、衣裳・カツラで数十キロになる。女方でなくては演じられない。

○第四章「これを見よ 歌舞伎演目厳選10」

  • 仮名手本忠臣蔵(七段目、祇園一力茶屋の場):廓の華やかな場面。決して中身を知られてはいけない手紙をお軽と九太夫に読まれてしまった。由良之助は二人を殺さなくてはならなくなるが、仇討ちに加わりたいお軽の兄平右衛門は、お軽に九太夫を斬らせ、自分は泣いてお軽を斬る。
  • 菅原伝授手習鑑(寺子屋):せまじきものは宮仕え、など
  • 義経千本桜(川連法眼館の場(四の切)):狐忠信の狐言葉やケレン(早替わり)が見もの
  • 一條大蔵物語
  • 本朝廿四孝(十種香)
  • 東海道四谷怪談
  • 籠釣瓶花街酔醒(通称:籠釣瓶)
  • 雪暮夜入谷畦道(通称:入谷)
  • 助六由縁江戸桜:登場人物の化粧が美しい。絢爛豪華。主人公は50分経ってようやく現れる。2時間三浦屋店先から場面が変わらないが飽きさせない。登場人物のプライドが伝わってくる。
  • 勧進帳:日本人の理想像

○第五章「納得!歌舞伎のイロハ」

  • 三味線にはジャンルが四つある。
    • 1.長唄:細棹、唄物、上手奥、見台は白木
    • 2.常磐津:中棹、語り物、下手、見台は朱色、肩衣は柿色
    • 3.清元:中棹、語り物、上手、見台は黒の一本足、肩衣はもえ黄(緑色)
    • 4.義太夫:太棹、語り物、上手、見台は黒で二本の房がついている
  • 黒御簾音楽(下座音楽):BGMとなる。
  • 義太夫:ナレーターの役目
  • 歌舞伎舞踊、日本舞踊、同じ作品を踊ることもある。女方の舞踊としては、娘道成寺、鷺娘、藤娘が有名。
  • 獅子物、道成寺物などが有名。道成寺物はすべて安珍清姫伝説を題材にしている。
  • 舞踊については分かりにくいという人も多いようだ。いろいろと表現をしているので予習をするもよし、肩の力を抜いて見るもよしというところか。
  • だんまりと宙乗り、江戸人の宇宙観を示している。だんまりでは何人かの役者が暗闇の中で宝物や証拠の品をとりあう。これは、変えてはいけない演出。いっぽう宙乗りは江戸時代から行われていた。一度歌舞伎から否定されたもの。

○第六章「文楽 はじめの一歩」

  • 歌舞伎は「昼の部」「夜の部」というが文楽は「第一部」「第二部」という。
  • 大体3〜4時間の公演となる。

○第七章「文楽へ行ってみよう」

  • 開演の15分前には幕開き三番艘が見られる。神聖さや公演の無事を祈るもの。
  • 定式幕は歌舞伎とは逆で左から右に開く。
  • 盆に乗って太夫と三味線弾きがあらわれ、口上を述べる。

○第八章「あなたもはまるその魅力」

  • ナマの文楽を見て驚いた。太夫の語りが熱演であること。音のボリュームもあり。人形も想像より大きい。

○第九章「文楽演目厳選10」

  • 仮名手本忠臣蔵
  • 菅原伝授手習鑑
  • 義経千本桜
  • 熊谷陣屋
  • 妹背山婦女庭訓
  • 摂州合邦辻
  • 平家女護島
  • 本朝廿四孝
  • 夏祭浪花鑑
  • 曾根崎心中

○第十章「納得! 文楽のイロハ」

  • 文楽の語りは、マクラと呼ばれる冒頭がゆっくりで段切と呼ばれるラストの部分は速いスピードで進む。

○終章「これからの歌舞伎、これからの文楽

  • 現代演劇の演出家による再創造も行われている。