香山リカ『なぜ日本人は劣化したか』講談社現代新書、2007年4月
- 作者: 香山リカ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/04/19
- メディア: 新書
- クリック: 14回
- この商品を含むブログ (49件) を見る
- 日本人は、全世代、全階層、全分野にわたって急速に劣化しつつある。これは一部の「下流」に属する人ばかりの話ではない。
- 雑誌から原稿の依頼があり執筆したが、説明的な文章は読まれないからすべて削除し、箇条書き形式で書いて欲しいといわれた。読者は、背景とか理由などは考えないからだという。また一息に読めるのは以前は800字といわれたが今では200字になってきているという。
- 「あらすじで読む〜」「サビだけ聴くCD」などが売れている。しかし、あらすじを読んだ後に本編に挑戦するかというと決してそんなことはない。どうやら短い本しか読めないらしいのだ。こうした日本語能力の劣化が30代、40代に起きている。
- こうした状況は、本来的な状況への回帰と言えるのか、それとも一種の進化なのか。
- 「死にたい」願望を持つ若者も増えている。何かショックを受けた際にそこから立ち直る力が失われているようだ。
- 学ぶ力も劣化しており、90分の講義に耐えられない、本を読み通すことができないなどの現象が生じている。
- 社会は犯罪への厳罰化傾向に向かっている。これは被害者保護の視点に立つと意識の進歩かも知れないが、反面包摂型社会から排除型社会への移行に伴う非寛容化であるともいえる。
- 社会の衰退・劣化は日本固有の現象ではなく、アメリカでも生じている。
- 新自由主義が社会の趨勢となっている。強者の論理が主役となり、他者に厳しく自分に甘い、弱肉強食は当たり前という排除型社会に向かいつつあるが、それを進化ととらえている人もいる。
- 生命を維持する力さえ失われてきている。バーチャル社会である「セカンドライフ」が人気がある。
- 病気もそれを認識することで対応できる。われわれも、自分たちは劣化しているという病識を持つことが必要である。
- 劣化は結局のところ損である。割り切って対策を進めるべきである。
- 柳田国男は郷土研究や郷土教育を通じて社会の課題を解決しようという手掛かりを提供しようとした。こうした取り組みは社会を劣化から救う手だてになるだろう。
いま、伝える媒体には「分かりやすさ」があるかどうかが重要なポイントとなっている。とりわけ端的な言葉と説明の省略が特徴だ。
それは、情報の送り手から受け手に対しての配慮であるといえるが、一方で受け手はそれ以外のものを読み込むことができなくなっているということか。