浜本隆志『ねむり姫の謎』講談社現代新書、1999年7月
- 作者: 浜本隆志
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1999/07
- メディア: 新書
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○第一章「『ねむり姫』のルーツ」
- ぺローの『眠れる森の美女』、グリム童話の『いばら姫』など、王女が15歳になると紡錘に刺され、眠りに入るという物語がある。そして王子のキスにより目を覚ます。この類話はヨーロッパ各地にある。こうした話のルーツとして、14世紀に古フランス語で起草された『ペルセフォレ』がある。この物語の中には、姫の誕生、女神による予言、とげに刺されて眠りに陥ること、覚醒及び勇敢な求愛者と結ばれること、などのストーリーが展開されている。
- 睡眠中に性的関係があって妊娠し、子供が生まれるという場面が描かれているが、ルイ十四世の統治するバロック時代に作られたぺローの『眠れる森の美女』ではその部分は省略されている。
- ミロのビーナスも失われた左手には糸紬棒を持っていたのではないかという説がある。糸紬の仕事は女性の仕事として重視され、糸巻棒は女性のシンボルとなっていた。
- 人類は古くから亜麻の繊維を衣服に使っていた。糸つむぎは、亜麻の繊維の束から亜麻糸をつむぎだす作業だった。糸つむぎの作業は愛や性に関連する意味合いがあった。
- 冬の夜、娘たちは集まって共同で糸つむぎの作業をした。16から19世紀にかけてフランスやドイツを中心にヨーロッパ全域に広がった。そこには、若者も集まってき、性的な行為も行われた。糸つむぎ部屋を取り締まる禁止令も出された。
- 結婚式では猥談が語られ、姦通願望など、性に関する話題がおおっぴらに語られていた。
- 近親相姦、姦通などは、斬首や火あぶりなどで罰せられた。
- キリスト教のなかで、もっとも糸つむぎ部屋の習俗を批判したのはカルヴァン派であった。カルヴァン派は禁欲主義で有名だが、マックス・ヴェーバーも言う通り、修道士には徹底できても世俗的生活では徹底できなかったようだ。
- グリム兄弟もカルヴァン派である。糸つむぎ部屋の禁止令は、『いばら姫』の国王による糸つむぎ道具の廃棄という物語と深くかかわっている。