野口悠紀雄『「超」整理法』中公新書、1993年11月

「超」整理法―情報検索と発想の新システム (中公新書)

「超」整理法―情報検索と発想の新システム (中公新書)

■内容【個人的評価:★★★−−】
○序章「あなたの整理法はまちがっている」

  • 書類システムの大改革をやり、美しく整然とした体系になってもこれが徐々に崩れていってしまう。この原因は、あなたが資料や書類を分類しようとしたことにある。
  • 分類は以下の理由から難しい。
    • 1.さまざまな属性を有しており、このジャンルと整然と分けがたい
    • 2.境界領域にある
    • 3.タテ分類とヨコ分類の問題(あの人はゴルフは嫌いだがうまい、など)
  • このような原理上の問題に加え、実務的な問題もある。
    • 1.分類は手間ひまがかかる
    • 2.保存した資料のほとんどは使われない
  • 要は、必要な情報が失われず、出てくればよいのである。システムをつくるのが目的ではなく、必要なものが出てくるのが目的だろう。
  • 分類をしなくても検索できる、これが超整理法である。超整理法は、以下の二つの手法による。
    • 1.すべての情報を時間順に並べ、時間軸をキーに検索する
    • 2.できる限りコンピュータを活用する

○第一章「紙と戦う「超」整理法」

  • パソコンを使い始めたとき、紙と縁が切れると思ったことがあったが、現実はそれには程遠い。むしろパソコンの普及により紙が増えている。
  • 紙資料は封筒に入れ、封筒には、内容と日付、色別マークをつける。そして使わなかったものは捨てる。これが押し出し式ファイリングであり紙資料の整理のすべてである。
  • ファイリングにキャビネットを使わない方がよい。キャビネットブラックホールであり、いらないものが残り続けてしまう。本棚が一番よい。
  • 個人用の場合にも決して捨てないものは別のシステムが採用されてよい。私の場合、書いた論文は「ポケット一つ原則」の例外として扱っている。
  • 電話のメモであるが、ノート一冊がよい。紙切れだと紛失してしまう。大学ノートに時間順に書いていくのがよい。
  • 本や書類は積んではいけない。必ず立てることである。本も捨てることだ。コスト的にも必要なときに買う方が安いのではないか。

○第二章「パソコンによる「超」整理法」

  • 高速検索が可能なので、ファイルを分類・整理する必要がない。
  • 論文作成のほか、日誌、データベースなどに利用したい。予定表はパソコン向きでない。

○第三章「整理法の一般理論」

  • 内容による分類をしないのは、資料・書類である。モノ(事務用品等)は、きちんと分類すべきである。

○第四章「アイディア製造システム」

  • こんな形でとりかかってはどうか。
    • (1)取り掛かり
      • 1.テーマを決める
      • 2.さまざまな論点を出す
      • 3.仮の結論を設定する
      • 4.考えついたことをメモの形で書く
      • 5.ある程度進んだところで最も主張したい点はなにかを明確にする
      • 6.仮の結論、仮説を設定する(結論はひとことで書けなければならない)
      • 7.要約、サマリーの形にする
    • (2)ゆさぶり
      • 1.スケッチをまとめ、メモを集めて元の文章に追加し、全体として統一の取れた形とする(本筋を外れた話を入れていないか注意する)
      • 2.友人に読んでもらう、本を読んで自分から揺さぶりをかける
    • (3)結晶過程
      • 1.机に向かってひたすら書き進める(論旨をいま一度確認し、説得できるような理由をつける。余裕があれば、問題を取り上げた理由、ほかの人の意見などを述べ、やり残したこと、限定条件などを述べる)
  • 自分のひらめきをいつでもメモできる体制にしておきたい。

○終章「高度知識社会に向けて」

  • 個人レベルの情報処理能力が一変している。処理の方法論も変わるべきなのに変わっていない。
  • ここで明らかにした考え方は主として個人レベルのものであるが、今後、企業での仕事も個人レベルのものに変わっていくはず。

■読後感
発想を形にするための「形」があるのではないか。これを、作者は頭に持っている。これに当てはめればOUTPUTが比較的楽にできるのではないか。