市井三郎『歴史の進歩とはなにか』岩波新書、1971年10月

歴史の進歩とはなにか (1971年) (岩波新書)

歴史の進歩とはなにか (1971年) (岩波新書)

■内容【個人的評価:★★★−−】
○第一章「問題はどこに?」

  • 近代市民社会なるものは、競争の原理によっているために、敗残するものと勝利するものに分かれる。
  • 近代は、どんな社会制度を立案すれば人間が社会的・集団的存在としてより望ましい状態になるのかということを哲学的に考察し、立法化してきた。しかし、予想された望ましい状態が実現されていない。

○第二章「進歩史観の源泉(1)」

  • 最も有名なのは、コンドルセ(1743-94)の『人間精神進歩史』(1793-94執筆)である。また、これに先んじてチュルゴ(1727-81)は、人間歴史を進歩するものとみなす歴史理論をはじめて祖述した。1750年にチュルゴはソルボンヌ大学で「人間精神の継続的進歩について」という講演を行っている。
  • チュルゴは、古代中国の先進性に驚嘆しながらも、それ以来停滞していると考えた。

○第三章「進歩史観の源泉(2)」

  • コンドルセは、人間の倫理は完全化するということを安易に信じていたきらいがある。ヨーロッパにおける啓蒙がさらに非ヨーロッパ世界へ及んでいかなければならないと考えた。

○第四章「進歩思想の類型的整理」

○第九章「結論」

  • 進歩という概念については、たとえば科学的認識の進歩というような特殊な人間の営みの場合は、その意味が明確に定まるのだが、人間歴史全体には明瞭な進歩の様相は確認できないということである。
  • 科学技術の進歩は、究極兵器を生み出したり公害を生み出したり格差の問題を生じさせたりしている。それを進歩とは言いがたいはずである。
  • 不条理な苦痛を減らすといった価値理念を実現すべきである。