粥川準二『クローン人間』光文社新書、2003年1月

クローン人間 (光文社新書)

クローン人間 (光文社新書)

■内容【個人的評価:★★★−−】
○第一章「誰のためのクローン人間か?」

  • 2002年4月、イタリア人の産婦人科医、セベリノ・アンティノリがヒトクローン個体を妊娠させることに成功したと公表した。これはクローンしたいヒトの体細胞核を、核を取り除いた卵子に移植し、こうしてできたヒトクローン胚を女性の子宮に移して妊娠させるものである。通常、個体は卵子精子が結びつくため、二人分の遺伝情報が受け継がれるが、ヒトクローン胚は一人だけの遺伝情報を受け継ぐ。
  • 日本では、2001年、クローン技術規制法によりヒトクローン個体を作ることは禁止された。
  • クローンは、動物の例をみると流産や死産が多い。また免疫力が弱いなどの問題もある。

○第二章「クローン技術の正体」

  • 核移植によるクローン動物の作成方法には二通りあり、体細胞クローンと受精卵クローンがある。後者は旧式のものであり、前者は最近行われるようになった。羊のドリーは前者によるものである。
  • 最近、再生医療ということでES細胞が注目されている。これは、発生初期の胚からつくられる特殊な細胞である。この細胞は、身体のあらゆる臓器や組織に分化でき、無限に増殖できるという性質を持っている。

○第三章「クローン人間批判の落とし穴〜優生思想〜」

  • このまま進んでいくと、人を見る目が物を見る目と変わらなくなってしまうだろう。

○第四章「クローン神話の崩壊」

  • クローン技術はハードルが高い。本当に、クローン技術を安全なものにするためには、何千何万ものヒトクローン胚の作製を試みなければならないだろう。

○第五章「政治とクローン」

  • 日本におけるクローン技術規制法の制定は拙速な面がある。検討不十分のまま法制化された。

○第六章「万能細胞の研究が始まった」

  • ES細胞の研究が進展しつつある。その輸入も承認された。しかし、倫理委員会の活動がこれに追いついていない。

○第七章「卵は誰が提供するのか?」

  • 提供者は女性である。これを男ばかりの集団が検討しているという異常な状態である。

○第八章「ヒトクローン胚、是か否か?」

  • 法律以外に、きちんとした監督ができる機関が必要である。人体の資源化が急速に進められてしまう恐れがある。