山口二郎『若者のための政治マニュアル』講談社現代新書、2008年11月

若者のための政治マニュアル (講談社現代新書)

若者のための政治マニュアル (講談社現代新書)

■内容【個人的評価:★★★−−】
○ルール1「生命を粗末にするな」

  • 未来に希望の持てない若者が増えており、自殺者の数はきわめて多くなっている。一方で、イラクで殺害された若者を見捨てたり、労働者をモノ扱いするような規制緩和が行われたりしている。また、この「改革」を国民は狂喜して迎えた。

○ルール2「自分が一番−もっとわがままになろう」

  • 最近はとかく権利ばかり主張して、という批判がされることがある。しかし、権利自体は数百年かけて勝ち取ったものである。これを行使するのに遠慮する方がどうかしている。

○ルール3「人は同じようなことで苦しんでいるものだ、だから助け合える」

  • 改革の名のもとに進行しつつあるのはアメリカ型の自己責任社会への移行である。この社会ではリスクを社会化することなく個人が引き受けることになる。たしかに、リスクの社会化は腐敗の温床ともなっていたことは否定できない。

○ルール4「無責任でいいじゃないか」

  • 自己責任とは言うが、みなそれぞれのおかれた状況下で努力して生活している。それなのに自己責任を強調するあまり社会から助け合いをなくしてしまっていることが問題である。

○ルール5「頭のよい政治家を信用するな」

  • 現状に問題があり、それをただすために政治は必要である。したがって理想に向かって進む強い意思が必要である。理想の大きさや志の大きさが政治家の値打ちを決める。
  • 新銀行東京のような事例は無責任な政治家の責任逃れである。仮に政策が失敗したなら、素直に誤りを認め傷が浅い段階で撤退すべきである。
  • 国民が冷酷非常な小泉政治を支持したことは、面倒見としての政治を否定するという転換に踏み出したことを意味する。

○ルール6「あやふやな言葉を使うな、あやふやな言葉を使うやつを信用するな」

  • メディアを良くしようと思ったら、いい情報を提供してくれたメディアをほめることが必要である。

○ルール7「権利を使わない人は政治家からも無視される」

  • 一票は権利である。これを通じて政治を変えることができる。

○ルール8「本当の敵を見つけよう、仲間内のいがみ合いをすれば喜ぶやつが必ずいる」

○ルール9「今を受け容れつつ否定する」

  • 本当に世の中を変えるためには現実を冷静に見渡し、策を周到に練らなければならない。懐疑的な進歩主義、楽観的な保守主義が必要である。

○ルール10「当たり前のことを疑え」

  • 当たり前は時代により異なる。これを常にかき回すことが必要である。政治参加や裁判などを通じてこれを実現していくべきである。