田畑茂二郎『国際法講義 上』有信堂、1982年4月
- 作者: 田畑茂二郎
- 出版社/メーカー: 有信堂高文社
- 発売日: 1982/04
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◎総論
○第一章「国際法の歴史的形態」
- 1648年に開かれたウェストファリア会議は、当時のヨーロッパの大国がほとんど全部参加し、神聖ローマ皇帝とローマ法王のかつての普遍的な権威を否定し、主権国家を基軸とするいわゆるヨーロッパ国家体制の形成を決定的なものにしたという意味において、国際法の歴史上きわめて重要な意義をもつものであった。そうした状況の中でグロティウスをはじめ、近代国際法学の創始者と称される数多くの学者が輩出された。
- グロティウスの主著『戦争と平和の法』では、三十年戦争のさなかに書かれ、絶対君主の間で行われていた闘争を前に、これを調整するために国際法の必要を人々に訴えようとする、あるべき国際法の姿を論じたものである。
- 中世の封建国家を崩壊させ、主権的な近代国家の成立を促した根本的な事情は、東方諸国よりの財貨の流入、商人階級の台頭による封鎖的自然経済の崩壊にあった。国家が財政の必要から国際貿易に関与するようになると「取引の安全」「予測可能性」を保証するために国際法規範が要求されざるを得なかった。
- 近代国際法、1815年のウィーン会議から1924年にかけて締結された条約の数は16000にも上り、通商、領事職務、犯罪人引渡、郵便、電信、電話、鉄道、著作権、工業所有権といった、非政治的な商業的、行政的、技術的な性質の条約がいちじるしく多くなってきた。
- 第一次大戦を経験し、国際連盟が樹立され、国際平和を実現するために、勢力均衡方式から集団安全保障の方式が制度化された。バランスではなく、対立する国家を含め、相互の武力行使を一定の範囲に制限するものである。連盟の規約では、紛争が生じた場合、ただちに戦争に訴えることが禁止され、国際裁判か連盟理事会の審査に紛争を付託することが要求された。
- 第二次大戦後は、国際連合において、国際平和の基礎をなすものとして諸国家の経済的、社会的協力が重視され、国際労働機関(ILO)、国際連合食糧農業機関(FAO)など数多くの専門機関が樹立された。
○第一章「国際法の正体」
- 国家の領域は、一定範囲の地域とその周辺の一定範囲にわたる海帯を含んだ水域およびこれらの上空から構成される、つまり陸と水と空である。
- 水に関していうと、内水(河川、運河、湖沼、湾、内海、港)は外国船舶が沿岸国の同意なしに無断ではいることが許されないが、領海においては外国船舶の無害通行権がある。
- 領海は、3カイリを主張するアメリカ、200カイリを主張するペルーなど対立があったが、最終的には12カイリとなった。
- 領空に関しては、大気圏までとなっている。
- 国家が領域を取得するには、割譲と併合という両国家による合意によるものと、征服と先占という一方的な行為によるものがある。征服と軍事的占領とはそれが実効的かつ確定的なものであるか一時的なものであるかの違いがある。
- 集団殺害は国際法上の犯罪であり、締約国はそれを防止し処罰する義務を負っている。
- 外交官は、その生命、身体、名誉を通常の外国人以上に特別に手厚く保護される権利を認められている。
- 領事官は本国及び在留自国民の一定の利益を保護するために派遣される行政機関であって相手国領域の一定の区域を管轄範囲として一定の行政事務を行う。
- 批准とは、当事国の国家代表が作成し署名した条約の内容において最終的な同意の意思が確定することをいう。