川喜多二郎『発想法−創造性開発のために−』中公新書、1967年2月

発想法―創造性開発のために (中公新書 (136))

発想法―創造性開発のために (中公新書 (136))

■内容【個人的評価:★★★★−】
○1「野外科学−現場の科学」

  • 発想法とは、アイディアを作り出す方法であり、英語で表記するとアブダクションということになる。インダクション(帰納法)、デダクション(演繹法)とならぶ概念であり、この三分法はアリストテレスがすでに採用している。
  • アブダクションはひったくる、かどわかすなどの意味があるが、なにか新しいアイディアを情報群の中から引っ張り出すという意味合いがある。
  • 発想法は、科学を書斎科学、実験科学、野外科学に分けると、野外科学に関係が深い。
  • 書斎科学は、文献と推論に重きを置いている。実験科学と野外科学は現実の経験と観察に重きを置いている。
  • 実験科学と野外科学は類似している面もあるが、実験の場合は疑似的・人工的な自然を作り出すのに対し、野外科学は自然そのものである。
  • 実験科学は仮説の検証をするが、野外科学は仮説の発想と結びついている。

○2「野外科学の方法と条件」

  • 何か問題があると感じたとき、関係のありそうな事柄をすべて列挙してみてその関係を組み立ててみるのが有効である。そしてその構造を短い一行の文句で表現することである。
  • 自分は野外観察するときは記録を後ろに糊のついたカードに記載する。そのうえで整理し清書する。
  • 清書したものは、たとえ今自分が死んでもけっして意味を間違えず他人が利用できるようになっていなければならない。
  • データの分類でなく統合と構造化がKJ法の神髄である。構造づくりにおいて個別の瑣末と思われる観察記録が大いに意味を持つ。

○3「発想をうながすKJ法

  • 関連があると思われる紙切れどうしをつなぎあわせることで関連が見えてくる。

○4「創造体験と自己変革」

  • KJ法においては討論中の批判は厳禁である。
  • たとえば都市計画をつくるとき、欧米では計画青写真を2、3年店晒しにしておき、批判等を吸い上げてから実施する。日本では抜き打ち的に実施する。日本の都市計画はこうして現状にそぐわないものになっている。
  • 英国人は経験を重視する。一方、フランスやドイツでは理論を重視する。『国富論』『人口論』のようなイギリスの古典でも、理論に対する例外があることを許容している。KJ法は英国人的な経験論哲学を実技に移したものである。

○5「KJ法の応用とその効果」

  • KJ法は読書や会議にも応用できる。

○6「むすび」

  • 現実をよく見て全体構造を認識し問題をつかみだす手法としてKJ法を利用してほしい。日本人の心性にも適合した方法である。