宮本忠雄『現代の異常と正常』平凡社選書、1972年1月

■内容【個人的評価:★★★−−】
○1「医学的人間学の視点」

  • 精神薄弱については、IQ70という指数が境界として位置づけられているけれども、これは、その境界より下の人間を組み込もうとすれば、社会や文化のシステムになんらかの不都合が生じるということであろう。

○2「現代の精神病理」

  • 休日や引退後に、生活の目標がなくなり老けこんでしまい、自殺への道をたどる人は少なくない。デンマークなど社会保障の進んだ北欧諸国や、平和と福祉を享受しているスイスなどにこの傾向が高い。彼らの生きる道は死に至る平坦な道である。刑期を終えれば世の中へ出られる望みをもつ囚人よりも不幸といえるのかもしれない。
  • ガンなどの病気の恐ろしさがマスコミで喧伝されており、健康が人生の絶対的価値であると信じている人たちは、ちょっとした症状で自分が非常に思い病気にかかっていると信じ込んでヒポコンドリー(心気症)の悪循環ができあがる。眠ろうとするほど眠れないのと同じである。

○3「狂気と精神病」