河合隼雄『無意識の構造』中公新書、1977年9月
- 作者: 河合隼雄
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 1977/09/22
- メディア: 新書
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○1「無意識へのアプローチ」
- フロイトは、ヒステリー(たとえば耳が聞こえなくなる、など)の心理的メカニズムを明らかにした。ヒステリーには原因として心的外傷があり、これを意識の外に追いやることを「抑圧」と名付けた。ヒステリーの治療は、抑圧されている外傷体験を見いだし、意識化することから始まるとした。
- フロイトはユダヤ人である。ユングはフロイトの『夢判断』を読んで感激し、1907年にはじめて二人は出会って13時間も休みなしに話し合った。二人はともに無意識の世界に魅せられていたが、1913年を境に二人はきっぱり別れてしまった。
- フロイトはエディプス・コンプレックス(エレクトラ・コンプレックスを含む)をもっとも根源的なものとしてとらえた。これに対し、アドラーは、性の衝動よりも権力を求める欲求の方が根源的であると考え、劣等感の存在をもっとも根源的なものとしてとらえた。
- フロイトは神経症者の治療を主としていたが、ユングは精神分裂病者に接することが多かった。ユングは分裂病者に接するうちに、フロイトの理論ではどうしても説明できないと感じ始めた。
- 分裂病者がユングに対し、太陽のぺニスが見えるとしたが、これはギリシャ語で書かれた古いミトラの祈祷書の話と同じであった。こうしたことから、人間の無意識の層は、個人的無意識のみならず、他の人間とも共通に普遍性のある普遍的無意識が存在すると考えるようになった。
○3「無意識の深層」
- 人間は外界に向けた自分の仮面を必要とする。それがペルソナである。ペルソナによって社会は円滑に動くが、これが強くなるほど、男性においては女性的な面(アニマ)、女性においては男性的な面(アニムス)が無意識界に沈んでいく。
ユングの、われわれ人類に共通する無意識層があるという仮説であるが、現代の精神疾患のある者が作り出す芸術作品が、なぜか古代の人々が作り上げたそれに似ているといった特性を見ると、そうした仮説も分からないではない。