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吉村正和『フリーメイソン』講談社現代新書、1989年1月

フリーメイソン (講談社現代新書)

フリーメイソン (講談社現代新書)

■内容【個人的評価:★★★−−】
○1「プロローグ」

  • 日本では、フリーメイソンという名前を聞いて、まったく聞いたことがない人が八割、残り二割の人も、せいぜいモーツァルトの『魔笛』、トルストイの『戦争と平和』、トマス・マンの『魔の山』などを聴いたり読んだりしているときにその名前を小耳にはさんだくらいであろう。
  • フリーメイソンは現在、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、オーストラリア、北アメリカ、中央アメリカ南アメリカなど全世界に支部を持つ世界的な組織であり、会員数は600万人を超えると言われる。その3分の2にあたる408万人はアメリカに住んでいる。
  • 平均的なアメリカ人がもっているフリーメイソン像は、「秘密結社」というイメージからは程遠く、病院・福祉施設へ多額の寄付をし、会員が相互に親睦を深める集会を持っている慈善団体あるいは相互扶助団体というイメージであると考えられる。

○2「フリーメイソンの起源と歴史」

○3「フリーメイソンの思想と目的」

  • フリーメイソンの目的は、徳性の涵養による個人としての人間の完成と、社会全体の完成にある。個人としての人間の完成だけが目的であれば、何もフリーメイソンだけではなく、プラトン以来のヨーロッパ哲学あるいはキリスト教倫理学と何ら変わるところがない。フリーメイソンにおける人間の完成は、「ソロモンの神殿」に象徴される壮大な建築物の建設の過程として説明されるところに特色がある。個人の完成だけではなく、社会の完成も神殿建築の過程として説明される。
  • 魔笛』に表現されたフリーメイソン思想の特徴は、古代の密儀宗教に端を発する西欧神秘主義と、西欧近代の理性主義・啓蒙主義・科学主義が融合しているところにある。

○4「アメリカの形成とフリーメイソン

  • フリーメイソンの視点からアメリカ合衆国を見るとき、まず第一に浮かんでくるのは「道徳」という概念である。アメリカは、意外に思われるかもしれないが、その本質は道徳国家である。

■読後感
社会設計における理想あるいはユートピアという概念があるが、これは長期の問題においては有意であっても、一人の人間の一生においてはそれほど力を持たないのではないか。それよりも、目の前の障害をどう除去するか、の方が実際的な問いかけであるともいえる。
社会に関わる仕事を行う場合、その見方の一つに、科学的なのか文学的なのかということがある。人間=機械という観点からは科学的がいいわけだが、人間=心理の動物という観点からは文学的な解決法が望まれることが多い。ある意味で、納得、不満といった結果に対する観点ですらすべて文学的である。マスコミの論点なども、科学に力を借りて文学的に行われる。
社会に理想はあるようでいて現実にはありえない。また、理想的な社会が仮にあったとしても、ここで暮らす人間が理想的な人間というわけでもない。
人間はマスコミなどを通じて、社会の障害が除去されたりそのままになっていたりということを見て満足したり不満を持ったりということになる。
ただ一つ真理といえば、それは暮らしというものが成立しなければならない、ということだろう。