吉村正和『フリーメイソン』講談社現代新書、1989年1月
- 作者: 吉村正和
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1989/01/17
- メディア: 新書
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○1「プロローグ」
- 日本では、フリーメイソンという名前を聞いて、まったく聞いたことがない人が八割、残り二割の人も、せいぜいモーツァルトの『魔笛』、トルストイの『戦争と平和』、トマス・マンの『魔の山』などを聴いたり読んだりしているときにその名前を小耳にはさんだくらいであろう。
- フリーメイソンは現在、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、オーストラリア、北アメリカ、中央アメリカ、南アメリカなど全世界に支部を持つ世界的な組織であり、会員数は600万人を超えると言われる。その3分の2にあたる408万人はアメリカに住んでいる。
- 平均的なアメリカ人がもっているフリーメイソン像は、「秘密結社」というイメージからは程遠く、病院・福祉施設へ多額の寄付をし、会員が相互に親睦を深める集会を持っている慈善団体あるいは相互扶助団体というイメージであると考えられる。
○3「フリーメイソンの思想と目的」
社会設計における理想あるいはユートピアという概念があるが、これは長期の問題においては有意であっても、一人の人間の一生においてはそれほど力を持たないのではないか。それよりも、目の前の障害をどう除去するか、の方が実際的な問いかけであるともいえる。
社会に関わる仕事を行う場合、その見方の一つに、科学的なのか文学的なのかということがある。人間=機械という観点からは科学的がいいわけだが、人間=心理の動物という観点からは文学的な解決法が望まれることが多い。ある意味で、納得、不満といった結果に対する観点ですらすべて文学的である。マスコミの論点なども、科学に力を借りて文学的に行われる。
社会に理想はあるようでいて現実にはありえない。また、理想的な社会が仮にあったとしても、ここで暮らす人間が理想的な人間というわけでもない。
人間はマスコミなどを通じて、社会の障害が除去されたりそのままになっていたりということを見て満足したり不満を持ったりということになる。
ただ一つ真理といえば、それは暮らしというものが成立しなければならない、ということだろう。