太田秀通『スパルタとアテネ』岩波新書、1970年8月
スパルタとアテネ―古典古代のポリス社会 (岩波新書 青版 760)
- 作者: 太田秀通
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1970/08/20
- メディア: 新書
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○1「古典古代とはどんな時代か」
- 古代ギリシア・ローマのことを古典古代と呼んでいるが、これはルネサンス以来のヨーロッパ近代化の過程で形成された概念である。古い社会の伝統に反逆し、伝統的権威やカトリック教会の思想から離れて、人間の自然から与えられた自分の眼で世界を見、自分の心で考えることを出発点として、社会に革新的な空気を送り出そうとしたルネサンスの人々は、人間的自覚のよりどころとして古代ギリシア・ローマの人間中心の生き方・考え方・文化を復活させようと努力した。彼らが、自分自身の革新的な意図を貫くために「模範とすべき第一級の文化」としての「古典」を生んだ古代ギリシア・ローマを、その後の時代と区別したとき、「古典古代」の概念が芽生えたのである。
- 古典古代の歴史を大観すれば、前二千年紀後半に栄えたミケーネ時代の後に、ポリスを基本形態とする社会が形成され、ポリス社会の解体を受けて世界帝国の段階に移行した。
- 都市国家と訳されるポリスであるが、それはわれわれの考える都市とも国家とも異なるものである。都市とは言っても商工業者や労働者や官僚群の集住地ではなく、原則は土地所有農民を主として、商工業者とともに居住する市民団の居住地である。
○3「貴族制ポリスとその危機」
○4「スパルタ」
○5「アテネ」
○6「戦争と平和のポリス社会」
○7「ポリス市民の意識構造」
- プラトンの『国家論』は、正義のポリスを実現するために、内紛のない一致協力のポリス体制を作り出すために、ポリスの住民を生産者と守護者にわけ、守護者から利己心をなくすために厳格な共有制を強制し、守護者の中から哲学するものが出て、そのフィロソフィアの中で善のイデアをみたものが現実のポリスを支配する、そうしたポリスを理想国家とした。
- 古代の共産主義思想は、奴隷制を前提として支配階級の利害の不一致をなくそうというものであった。
- 奴隷は、生産手段から分離され、自己の属する共同体から切り離されて、他人の財産となった人間である。主人の意思に従って行動ないし労働を行い、その代わりに主人の財産によって養われる、家畜と等しい存在であった。奴隷制が急激に発展したのは、前六世紀であり、古典期を通じて発展した。