外山滋比古『思考の整理学』ちくま文庫、1986年4月

思考の整理学 (ちくま文庫)

思考の整理学 (ちくま文庫)

■内容【個人的評価:★★★★−】

  • 秘術は隠す。いくら愛弟子にでも隠そうとする。弟子は、教えてもらうことはあきらめて、なんとか師匠の持てるものを盗み取ろうと考える。ここが昔の教育の狙いである。師匠の教えようとしないものを奪いとろうと心掛けた門人は、いつのまにか、自分で新しい知識、情報を習得する力を持つようになっている。それに比べると、今の学校は、教える側が積極的でありすぎる。
  • くよくよすることはない。明日の朝、7時には解決しているよ。
  • 寝る前には、あまり、面白い本を読むのも考えものである。遅くなってからコーヒーや紅茶を飲むのもいけない。なるべく頭を騒がせずに朝を待つ。
  • 諸説を集大成し、よく整理してあれば、後人の便利にはなる。ただ、これを論文と呼ぶには問題がある。研究史ともいうべきものはせいぜい啓蒙的意義しか存在しない。いたずらに資料をあさり、埋没しているものを発掘するのを生きがいにしていてはいけない。ものを考え、新しい思考を生み出す第一の条件は、あくまで独創である。まず着想があり、そのうえで諸説を照合する。
  • 記録したという安心が忘却を促進するらしい。字を書いているとそちらに気をとられて内容がお留守になりやすい。講演を聴いてメモをとるのは賢明ではない、もっぱら耳を傾けていた方が話はよく頭に入るのである。
  • 何か考えが浮かんだときは、寝させるのも必要だが、記録することが大切である。
  • 手帖には年間で千から千五百項目の書き入れをしている。かつては年に一万を突破していた。
  • コンピューターの出現、普及にともなって、人間の頭を倉庫として使うことに疑問がわいてきた。そこでようやく創造的人間ということが問題となってきた。

■読後感
眠りとは、脳の整理を行う活動であるとのこと。朝になると解決している、とはそうしたことが影響を与えているともいえるだろう。