藤屋伸二『図解で学ぶドラッカー戦略』日本能率協会マネジメントセンター、2009年11月

図解で学ぶ ドラッカー戦略

図解で学ぶ ドラッカー戦略

■内容【個人的評価:★★★★−】
○PART1「ドラッカー戦略の基本を知る」

  • 貢献する対象となる顧客がいることが企業の存在意義であり、唯一の存在手段でもある。
  • マネジメントには三種類、1)事業のマネジメント(経営方針、経営戦略、経営計画、組織構造)、2)管理者のマネジメント(組織化、運営の仕組みとルール)、3)人と仕事のマネジメント(人の配置、やる気の高揚、仕事の設計)が、相互に補完しあって存在する。
  • 本を読んだり、講演を聞いたりして知識を得た気になっているが、それは知識を得るための手段を得たに過ぎない。知識とは、これら手段を成果を挙げる方法へ書き換える能力である。
  • 社会問題を事業を通してなくすことが自社・自分の責任・役割である。
  • 生産性を向上させる四つのステップがある。1)仕事を作業単位に分析する。2)分析した作業を必要なものだけを集めて総合する。3)総合したプロセスにコントロール手段を組み込む。4)それらの作業に適切な道具を考え、調達して与える。
  • 知識労働者は、自分の専門分野については誰よりも詳しくなければ存在意義がない。その彼らに専門分野について指揮・命令できるのは、彼ら自身だけである。知識労働者は自らの目標、貢献、行動について、責任を持たなければならない。目標に対する実績によって自らの仕事をコントロールできなければならない。

○PART2「ドラッカー戦略の本質を知る」

  • 戦略は使命の明確化からスタートする。
  • 戦略を立てるうえで科学(論理化可能)、芸術(能力必要)の要素がある。感性の要素が多くなるほど矛盾も大きくなる。様々な矛盾を調整するために、基準が必要であり、以下の三つにかかる意思決定が必要である。
    • 1.事業の定義(何をやるのか、今後どうするのか)
    • 2.卓越性の定義(強みを決め、必要な人材を決める)
    • 3.優先順位と劣後順位の決定(やるべきこと、やるべきでないことを決める)
  • 目標は重要である。しかし囚われはいけない。それは手段に過ぎないのだ。
  • 希少かつ優秀な人材は、もっとも大きなチャンスへ集中的に投入する。

○PART3「意思決定・コスト・組織」

  • すべての企業は、中核(コア・コンピタンス)を持たなければ生き残ることができない。専門化しつつ多角化することが要諦である。中核となる知識においては集中し、市場・商品・最終用途においては多角化するのである。
  • 組織は、直接的で単純なものほど効率的になる。また、階層は必要最小限及び命令系統を最短にする。
  • 組織は、事業ごとの連邦型組織と、開発・製造・営業・経理などに分かれる機能別組織がある。
  • 組織は戦略を実現するためのものであり、既存社員の救済のためのものではない。
  • 一般的に、情報の意味と流れをもとに組織形態を見直すと、管理階層の多くが不要または弊害となる。管理者のほとんどが本来やるべき仕事をやっておらず、性能の悪い中継器に過ぎない。
  • 情報が簡単に手に入る時代になり、管理職の役割はなくなり余剰人員化している。
  • 上司からの命令ではなく、上位部門の目標を参考に、自ら自部門の目標を設定し、自己責任においてやり遂げる、これが責任型組織(目標による管理)である。
  • 組織は戦略に従うものである。組織の設計からスタートするのではなく、事業の分析からスタートするべきである。(単純で簡素なものにする)
  • 社長・管理者が、何をしたいか、ではなく、何をすべきか、がきわめて重要である。
  • 責任と貢献と権限はセットである。権限を与えず責任を押し付けるのはナンセンスである。
  • 管理者は部下との関係を中心にして考えがちだが、自部門が属する上位部門に対する貢献を明らかにするところからスタートしなければならない。また、横との関係分析も必要。