樋口裕一『いい会議 悪い会議』海竜社、2006年4月

いい会議。悪い会議×

いい会議。悪い会議×

■内容【個人的評価:★★★★−】
○はじめに−世の中の会議の9割はムダだ−

  • 会議といっても、組織内部の意思統一、情報収集、問題解決、スキルアップなどさまざまな目的があるが、共通点として「ある種の目的が存在し、その目的の達成に向かって建設的な話し合いを行う」という目的がある。しかし、これを見失った会議が非常に多い。

○第一章「あなたの周りのムダな会議」

  • すでに決定したことを報告するだけなのに、いちいち意見を聞くふりをする。そんな会議が日本中でまかり通っている。何時間も名ばかりの議論を重ね、結局は「決定事項だから、大変申し訳ないが、ご了解いただきたい」という言葉で幕が下される。
  • イエスとノーの戦いによって問題点が見つかり、妥当な結論が導き出される。これが正しい会議のあり方だ。
  • もし決定事項を納得してもらう会議であれば、「これは決定事項なので、全員に受け入れていただきたい。ただし、関連業務にかかわるみなさんから意見を伺い、今後のために生かしたい」というように、前もってメンバー全員に知らせておくべきだ。こうした共通認識を持たず、討論を行った末に、決定事項だから異論は許さないと押し切られてしまうとモチベーションは下がってしまう。
  • 会議中は、論点が目的から離れたら司会役がしっかりと軌道修正する必要がある。また、参加者全員が意見をいえるように各人の発表時間を短時間に区切ることも効果がある。
  • 会議の目的はひとつ、多くても二つまでとし、事前に参加者に明確に伝えておこう。
  • 報告と連絡だけの会議は、まずはそれが本当に必要なのかどうかを検討する必要がある。必要がなければさっさと取りやめるべきだ。
  • 会議を開いてみんなに知らせる必要があるのは、プラスの報告ではなく、マイナスの報告である。
  • 回ってきた文書はしっかり読み込み、理解しておくこと。ビジネス文書に求められるのは第一に簡潔明瞭であることだ。できるかぎりA4判1枚に収めたい。
  • 会議の善し悪しは、準備で決まる。
    • 1.会議の目的が明確か
    • 2.目的に応じたメンバーと人数であるか
    • 3.目的に応じた議事となっているか
    • 4.適切なレジュメを用意したか
    • 5.日時と会場は大丈夫か
  • パニックを起こしたまま会議を行ってはならない。まずは直属の上司と協議することだ。
  • 失敗した者をさらしものにする会議はいけない。ミスの原因を調べ、二度と同じ過ちを犯さないためのポジティブな会議とすべきだ。
  • 呼ぶ理由が曖昧なのに、一応呼んで参加してもらうなどは、本人も呼ばれた理由がわからず、しっぺ返しをくらうことになる。逆に呼んでもいないのに参加し、持論を展開したがる人もいる。こうした人はダメだしばかりを行う。
  • ある案を通したい場合、それに反対の考えを持つ者を出席させたい。イエスマンだけ集めたのでは問題点を明確にできない。
  • 延々と議論を繰り広げ、決着のつかない会議もムダ中のムダである。これが生まれる原因も準備不足である。何もないところから始めても何も生まれないのだ。「とりあえず会議」はやらない方がいい。
  • 準備が整っていたのに何も決まらない場合は司会進行役や参加者の力不足が考えられる。複数のアイディアがあがって一本化できないようであれば、キャリアの高い人に意見を求めるなどした方がよい。
  • 会議では一人の人間に支配されてしまう場合が多い。そうであれば会議の意味はない。そうした人は威圧的な言動で相手を封じ込める。そうした無能な独裁者が参加する会議を円滑に進めるには、事前の根回しが何よりも大切である。独裁者を持ち上げ、あらかじめ意見を聞いておく。
  • 決まった案が実行されないことがある。実働を必要とする会議では、必ず実行・推進の責任者をはっきりさせてから終える。
  • 会議には型がある。
    • 1.問題提起(全体の1割)
    • 2.意見提示(全体の3割)
    • 3.展開(ここが最も重要、司会者の力量が問われる。全体の5割)
    • 4.結論(全体の1割)

○第二章「会議をダメにするダメな参加者」

  • 会議資料を読み上げる人
    • 【対処】要点だけご報告願います。発表する方は手短に願います。
  • 出席だけすればいいと思っている人(自分に関係するときだけ元気である、ということはかえって周りの雰囲気を悪くする)
    • 【対処】寝ぼけタイプは会議から外す、わがままタイプは無視する。
  • 会議中に武勇伝を語り始める人(私だったら、おれなんか、など)
    • 【対処】とりあえず全部話させる、その後ブレーク。
  • 話していることが意味不明である人
    • 【対処】それはどのような意味ですか、と聞いてしまう。

○第三章「不毛な会議からの脱出法」

  • 実行性を高めるには、必ず行動予定も決める。
  • 配布資料で注意すべきこと。
    • 1.結論を見出しに記す
    • 2.だらだら記さず、箇条書きにする
    • 3.前もって資料を配布する

○第四章「会議を仕切れない無能な人」

  • 激論となった場合。
    • 【対処】引き分けとして棚上げするか、どちらかの案に決定する。司会者がするべきなのは、双方の意見のポイントを明らかにして対立点をわかりやすく示すことである。権威者の意見を提供して収拾を図るもの一つの手段。
  • 良い案に決まらない場合。
    • 【対処】いさぎよく仕切り直しする。
  • 会議のルールを守らない場合。(時間通り参加者が集まらず、だらだらムードのまま会議が始まり、そのまま終わる例が少なくない。会議中におしゃべりする、居眠りする、許可なく席を立つ、人の話を聞かない。)
    • 【対処】ルール違反者に対して注意する。論理的に叱る。タイミング良く叱る。
  • 読む人の身になった議事録をつくろう。業務分担と責任者を明確にし、実施計画書を添付する。
    • 1.絶対に記しておくべき内容
      • −日時
      • −出席者
      • −報告事項の整理、協議事項の内容と結果
    • 2.計画の実施が求められる場合
      • −業務の範囲・内容・担当責任者
      • −業務の開始時期と終了予定
      • −業務の進捗状況の報告方法
      • −問題発生時の対応方法

■読後感
最近の会議は、脱線、雑談、社会人とは思われない言葉遣いのオンパレードで時間もかかり、報告ができるまで何週間もかかってしまう。何をやっているのか・・・。
対応としては、やはり司会の役割が大きい。きちんとした進行や対応を身につけるべきだ。ただし、進行にばかり気をつけると結論に先急ぎすることになってしまう。中立的でかつ論点を明確にするためには「よく聴く」ことが重要。
なかなかできないことで、やはり必要なのは、実行計画を伴った会議にならなければならないということ。これがないと、なるほど問題点と対応はわかった、でも誰かがやってくれるんだろうね、ということになりかねない。