河合太介+渡部幹『フリーライダー』講談社現代新書、2010年6月
フリーライダー あなたの隣のただのり社員 (講談社現代新書)
- 作者: 河合太介,渡部幹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/06/17
- メディア: 新書
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○第一章「ただのり社員に苛立つ職場」
- サボり系、略奪系、実務的負担系、精神的負担系という4つの軸で分類すると、アガリ型、成果・アイデア泥棒型、暗黒フォース型、クラッシャー型に分類できる。
読んで、どうもスッキリしない、「何だこれは」という感覚が残る。この本を読んだほかの社会人も同じ感覚を持つのではないか。何か、新しい概念(新しくもない?)「フリーライダー」を急いで分析、課題と対策をレポートとしてまとめあげたという感じ。たしかに部分的には穿った視点もあるけれど、どうも会社の実情というものについて半可通の感じが否めないのと、機械論で見ている=使われていない機械があるのだから何とか有効に使わなければ、という感覚である。また一つひとつの事象の取り上げ方・言葉の使い方が、「頑張る社員が馬鹿を見る会社」「新興諸国では、非常に高いモチベーションを持って、社員が前に向かって働いています」といった、手垢のついた、ステロタイプ、マスコミ風の取り上げ方になっている。対策も、「教育機会の提供」など、小手先で曖昧な表現が目立つ。
会社とは、一定のアウトプットを出す仕組み、ととらえれば、効果的なアウトプットにかかわっていない社員は明らかにおかしい。しかし、アウトプットは人により独占されることだってある。ましてやアウトプットが意味のないアウトプットである場合だってある。会社が社会の中の一つの制度とすれば、会社の中にも制度が存在している。その制度の血管が通わなくなっているのがフリーライダーである。一般にいう失業ではなく、社内失業である。
これをなくすには、効果的に働いてもらう(人の邪魔をしない)か、退場してもらうかどちらかしかない。前者は、組織として何が目的で何をすべきなのか、何ができるのかを改めて考え直すことが必要だ。後者は、客観的な評価を行うことが前段にあり、そして雇用関係を打ち切るという法的な対応がこれに続く。会社は、誰もがきちんと働くだろうという前提に立っており、それが裏切られることを想定していない。このため前者も後者も大変困難な作業となってしまう。
こうした経営学的な対処もさることながら、必要なのはよき先輩、よきグループ、といった文学の世界なのではないか、文学がある組織とは、目的志向で課題解決を行っている組織であると思われる。