岡田斗司夫『あなたを天才にするスマートノート』文藝春秋、2011年2月

あなたを天才にするスマートノート

あなたを天才にするスマートノート

■内容【個人的評価:★★★−−】
○まえがき

  • ダイエットと同じくノート術も、もちろん思考術だって、続けることが大切です。そのためには、「無理せず」「楽しく」が基本になります。
  • 天才とは、以下の三つの能力を兼ね備えた人です。
    • 1発想力
    • 2表現力
    • 3論理力
  • このそれぞれに関して高い能力を持ち、それが強い主体性によってひとつの人格の中にまとまっている状態。これを天才といいます。
  • ところが、一つの能力だけを強くしちゃうと、問題があります。たとえば発想力だけが強くなると、説得力がなくなります。表現力だけが強くなると、語る内容は、どんどん平凡になります。論理力だけが強くなると、話が冗長になってしまいます。

○「スマートノートのフェーズ進行」

  • スマートノートは、
    • 1 5行日記(行動記録を)
    • 2 今日はどんな日?(行動採点の)
    • 3 毎日一見開き(論理訓練)
    • 4 見せてお話(表現訓練)
    • 5 臨界突破(脳内リンク開始)
    • 6 知識→教養→見識(統合)
    • 7 世にでる(私によれば世界は)
  • という七つのフェーズから成り立っています。
  • 彼らは「大事なことはすべて頭の中にはいっている。いちいちノートに書く時間がもったいない。その時間があればすぐに行動した方が時間を無駄にせずにすむ」といいます。たしかに合理的だし、そういうとカッコいい。それに比べてメモを取っている自分はいかにも愚直に見えます。
  • 五個の箇条書きをメモするだけだったら、スマートフォンや携帯でも構いません。ただし、最終的には手書きのノートに切り替える必要があります。自分で書いた文字というのは感情が乗り移るので、あとで見るとそのときの気持ちまで再生されやすいからです。
  • 悩みの本質、苦しさの本質というのは、複数の問題を頭の中でグルグルと回している状態から生まれるのだと気づきました。
  • 面倒に感じても、一度紙に書き出してしまえば、二度といや待て、他にも考えることがあるとか悩まないですみます。
  • 論理が使えるようになると、急に頭がよくなった気がして気持ちいいですよ。いや、よくなった気ではなくて実際によくなるんですけどね。正確には頭がよくなるではなくて、ムダな横道に気が逸れなくなるんです。
  • 書くという作業は、そういう考える一歩手前の想念のを無理矢理固定化すさせる働きがあります。
  • 感じる、次に感じた理由を考える。私たちは感じているだけで、実は考えていない場合が多い。考えを言語化していません。
  • お題について論理的に展開してみましょう。展開の仕方は、なぜ?と考えて答えを書くことです。あったこと、思ったこと、理由、反論まで書けると、かなり論理的になります。
  • 論理的に考えるというのは、上下水平方向に物事をかんがえることです。まず下方向になぜ?と原因を掘り下げる。次に上方向にということは?と推理を積み上げてみる。どうする?という解決策を考えてみる。左方向、すなわち時間軸を過去に遡って、昔はどうだったか?を考える。右方向に、同じような事例がなかったか?と類似や連想を広げる。最後に私はいまこう考えるという自分事として結論を出します。
  • 論理を深めていくとみんな同じような結論になりやすい。だからこそ、最後に自分の感情を入れると私だけの論理になります。
  • 環境について、これから先のことを予想するとき、政府の対応が悪いなど第三者に責任を押し付けることで結論にしてしまう人が多い。それではテレビのワイドショーの当たり障りのないコメントと変わりません。必要なのは、自分はどうするのか?というところまで考えること。
  • 考えるということは、間違ってても構わないから自分なりの結論を持つということです。
  • 頭のいい人の意見を聞く=自分の頭の訓練を怠る、です。
  • 頭が良くなってたとえ収入が増えたとしても幸せになれるとは限らない。スマートノートは違います。まず最初に悩まなくなります。次に頭がよくなります。そして中間ゴールとして面白くなります。
  • 自分の頭の中で考えているより、人と話したときの方が、新しい発見や気付きが生まれやすい。
  • 人と話していたり本を読んでいたり、ブログを書いているとき、それは急にやって来ます。あそうか!と叫んでしまうでしょう。この第五フェーズの快感、分かった!の快感はすさまじいです。
  • この世界が一瞬でみずみずしく姿を変え、自分の周囲すべてのものに意味があるとわかる。その中で自分は何をしているのかほんの一瞬だけ俯瞰で見える。
  • 知識や情報を求め、検索し、調べ、流し見し、チェックする。こうしたことばかり続けているとあのわかるを忘れてしまう。

<追>(2011/03/21)

  • なぜ面白いことを書くのか?
  • それは来るべき第4フェーズで、このノートの中身を人に自慢したり話したりするためです。
  • いやいや落ち着いてください。直接話すんじゃなくて、ブログに書くでもtwitterでつぶやくでもいいんです。
  • そのためには「面白く」説明できなければいけません。いくら右ページで論理力を鍛えてもそれは面白い訳じゃない。人は面白くなければ正しい意見でも聞いてくれないのです。
  • 面白い要素とは何か?
    • 1 具体的な経験談(失敗談)
    • 2 的確な例えばなし
    • 3 要するに(抽象化)
    • 4 無茶なギャグ、ダジャレ
    • 5 ムリクリイラスト化、替え歌
    • 6 キャラ化

  • あなたや私の話を最初から理解して聞いてくれる人はたぶんいない。
  • だから理想の相手を探すのはやめましょう。
  • それよりも誰彼かまわず話しかけるという戦略の方がずっと効率がいいんです。
  • なぜ教養はつまらないのか?
  • そこに語り手の顔が見えないからです。
  • 見識とは、この教養に立場と判断をつけたものです。
  • 見識にはこのような俺が、私ががないとダメ。
  • ブログなどで批評的、批判的な文章を読んでも私は弱いなーと感じてしまいます。その弱さは自分の立場がないための弱さですね。
  • なぜ俺はこう思うのかという、俺の根拠がない。
  • 自分の立場を出してちゃんと発言するのは勇気が要ります。
  • だからといって逃げてはいけない。
  • 逃げると人格が下がるからです。

■読後感
天才を作る、が本書の目的であるが、どちらかというと人間の本性に着目してどうすればその人なりの感じ方を大切にして自らの世界観を構築できるか、自立的主体たりえるか、ということを目的としているように思われた。
手書きの効用についてはまさにいうとおりであり、手書きは自由、自由がなければ発想はありえない。ただし、手書きではやはり将来の活用を前提とするデータベースにはなりえないのでは。(自分自身こだわりもある。)
「15分あれば喫茶店に入りなさい」の着眼点も似ているが、人間の本性に立脚した生産活動を考えている。
わかった!の快感についてはまさにいうとおりであり、これは以前も書いたとおり。これが欲しくていろいろ考えるのだと思う。
(蛇足だが、3/11の大震災で自らも小規模ながら被災してみると、深く考えることなどできはしないことを気づかされた。)