今北純一『仕事で成長したい5%の日本人へ』新潮新書、2010年5月

仕事で成長したい5%の日本人へ (新潮新書)

仕事で成長したい5%の日本人へ (新潮新書)

■内容【個人的評価:★★★★−】

  • 仕事での成長には二種類があります。一つは、文字どおり仕事を遂行する能力の向上、もう一つは人間としての総合力の成長です。いずれの場合でも対決が欠かせません。細かく言えば、仕事を遂行する能力の成長のためには他人との対決が、また人間としての総合力の成長のためには自分自身との対決が必須です。
  • ここでいう対決は対立ではなく対話の基本をなすものです。仕事を遂行する能力には、プレゼンテーション、交渉力、問題解決力がありますが、これらの能力をいくら習得したところで、実践で活用し第三者による審判を受けなければ本物の能力になりません。
  • ラグビー平尾誠二さん、指揮者の佐渡裕さん、柔道の山下泰裕さん、将棋の羽生善治さんのような方々、「自分の世界」を確固として持ち、そのなかで成長しようという意欲を持っている人には、何か共通するものがあると思います。
  • 私は人間の成長にはMVPという三大要素、すなわちミッション、ビジョン、パッションが必要と考えています。

○ステップ1「自分の仕事の相場観を持つ」

  • 自分の能力を判断するのは自分ではない、他人である、という冷徹な事実は忘れない方がよい。仕事が面白くないから目先を変える、とかこんな会社にはいられないからという理由で仕事をやめたら必ずツケは回ってくる。

○ステップ2「評論家ではなく実践家になる」

  • 実践家としてやっていくことが大事ということは、実践をやってみてはじめてわかることです。ビジネスのスキルを上げるにはとにかく実践を繰り返すしかありません。

○ステップ3「他人を手本にはしても、憧れは抱かない」

  • 結局、どんなに優れた人であっても、その人を手本にしている限りは自分自身の成長はすぐに天井にぶつかってしまうことに気づきました。
  • 手本になるひとを参考にすること自体はいいのですが、そのままでは自分独自の世界を切り開くことはできません。
  • どんなに魅力的に見える環境でも、本気で仕事をしようと思えば苦労や辛さというものは必ず付きまとうからです。

○ステップ4「成長願望と上昇志向を混同しない」

■読後感
能力開発は、今や民間企業のみならず政府や地方自治体でも共通のキーワードだ。しかし、研修や読書で学んだことが、実践の場でどれだけ活用されているかと言えば、それはまだまだである。というより、それだけでは活かし難いのである。場を見つけて実践を繰り返す、これしかないといっていい。アウトプットがなければ身に付かないのだ。
また、仕事の場は本当に対決に満ちている。単なる知識ではとても対応できない。精神的にタフであり、かつ謙虚であることが必要なのだ。