宮本輝『幻の光』新潮文庫、1983年7月

幻の光 (新潮文庫)

幻の光 (新潮文庫)

■内容
幼なじみと結婚して子どもも生まれ、貧しいながらも幸せな生活を送っていた女性が、ある日突然自殺という形で夫を喪う。
時を経て奥能登にある寒村の旅館の料理人と再婚するが、亡くした前夫の記憶を拭うことができない。

■読後感
大切なものを喪い、記憶の何もかもを棄てたいが、しかし再婚する気持ちはないままに嫁いでいく女性。
「精が抜けると人は死ぬんじゃけ」という今の夫の言葉。
いろいろのものを喪った後のぼんやりした灯りのような幸せ。