小笠原敬承斎『男の一日一作法』光文社新書、2011年11月
- 作者: 小笠原敬承斎
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2011/11/17
- メディア: 新書
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○序章「礼儀作法の基本は「こころのあり方」」
- 礼法は学ぶにつれ、時間にゆとりをもって行動することが相手に対する心遣いにつながることだと、自然に理解するようになった。
- 聞き上手の人は、こころ遣いのある人だと思う。黙って相手の話を聞きながら、ときおりことばをはさみ、さらに相手が心地よい気分で話を進めていけるようにするには、序章の「遠慮」に通じるような、自らのこころへの積極的な働きかけが必要だからである。
- 量を多くし、高価な食材ばかりを揃えれば、おのずと食事の費用は値がさとなる。だが、果たしてそれが、本当に一流といわれるお店のとるべき姿勢なのかと考えると釈然としない。ふたたびお店を訪れたいと思う要素は、店内の清潔さ、お料理の盛り付けや、味のすばらしさはもちろんのこと、ご主人の人柄にある。
- お店の雰囲気は、客が作り出すと言っても過言ではない。どんなに豪華な内装で、質の高い料理が提供されたとしても、そこへ来店する客の品格が低いと、それだけで居心地の悪い場所になってしまう。
- いずれにせよ、客の側は、もてなされることだけを求めるのでなく、自分自身がその場全体の雰囲気をよくも悪くもする要素の一つである、という自覚を持つことが欠かせない。
- 多くの人は、「はじめまして」などと挨拶の口上を述べるや否や、身体を前傾させるのだが、これでは忙しない雰囲気を作り出す一方である。姿勢をただし、一呼吸してからお辞儀に移る。
- 《礼三息》
- 1息を吸いながら上体を傾ける
- 2動きが止まったところで息を吐く
- 3息を吸いながら上体を起こす
- 小笠原流の教えに、「礼三度に過ぐべからず」とあるのだが、お辞儀は回数が多いほど相手に対する気持ちが薄れてしまう。
- 高級レストランが行きつけのお店である、身に付けているものをひけらかす、過去の仕事の手柄話をするなど、世の中にはさまざまな自慢話が存在する。しかし、自慢話ほど、品格に欠けることはない。
- 自慢話は、その人の自信のないこころの表れにほかならないのである。
- 武士は、利益を追求することよりも、汚れのない精神を重んじていたのである。したがって当時の武士は、経済的なことを話題にするのは、はしたないことという認識があったという。
- 目立たない行動を実践するためにも、慎みの気遣いは大切であり、自己主張や自己顕示を抑える必要がある。
- 宴席で貴人に対して、酒の肴を盛ってある皿から取り分ける際、若い人が行うのは何となく似合わない。したがって、年齢を重ねて礼法の故実も心得ている人が行うのがよい。
- 訪問するさいの最初の挨拶では、上司から紹介されるまでは、自分から名刺を差し上げることはない、と心得ておかなければならない。
- 部下から慕われ、仕事の能力もある方は、知らないことを決して恥だと思わず、むしろ、知らないことについては素直に学びたいという、積極的な姿勢を持たれているように思う。
- 靴の外し方は、最初から出船式にするのではなく、玄関にはいったらまず、そのままの向きで靴をはずす。それは迎えてくださっている方に、すぐに背を向けてしまうのは失礼だという理由からである。
- 一般的に間違いやすいのは、手のひらを上に向け、受け皿のようにして食べることである。
- 贈り物で大切なのは、どれだけの思いを込めてその品物を選び、相手へ贈るのかということである。
○第五章「冠婚葬祭はこころで対応する」
■読後感
礼法も、それが目的であると嫌味になるが、自然にふるまえて、著者のいうように人にいやな思いをさせない、ということを目的としたものであれば生きたものになる。