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岡本かの子「鮨」(『老妓抄』新潮文庫、1950年4月所収)

老妓抄 (新潮文庫)

老妓抄 (新潮文庫)

■内容
山の手と下町の境い目あたりにある鮨屋にぽつりぽつりと通ってくる紳士と店の娘とのやり取りを描いている。

■読後感
店に通ってくる紳士、湊には恬淡とした存在感がある。鮨屋で知り合う相手には調子を合わせ、陽気なやり取りをしつつも、自身はどこか別のところに心をおいている。
そして店の娘、ともよへの自身の生い立ちの長い述懐の場面。ここで幼少から長い間食べ物を受け付けなかった自分に母親が鮨を握ってくれたエピソードが語られる。喜んで鮨を頬張った自分にたいして母親が見せた嬉しい驚きの表情の描写が心に残る。
明るく、どこか悲しげな東京を見せてくれる作品。ああ、この作者は日本語を大切に使っていたのだなあと実感させられる。