岡本かの子「老妓抄」(『老妓抄』新潮文庫、1950年4月所収)

老妓抄 (新潮文庫)

老妓抄 (新潮文庫)

■内容
年老いた芸妓が、自宅の電気工事に訪れた若者にたいし、住む場を提供し生活の面倒も見てその特許取得を支援しようとする。ところが、若者は当初は研究に取り組むがじきに熱を失ってしまう。

■読後感
恵まれた境遇であることが当人の人生の目標を実現させるわけではないことを淡々と書きつづっている。老芸妓にも若者にも、さまざまな場面でふっとした冷笑や、相手はどう思っているのか、という迷いなど一筋縄ではない感情の動きがある。
時間があればあるほど、感情の増幅やその解放を求める、という心の動きが際立ってくるようだ。