別冊太陽『山田風太郎』平凡社、2012年8月

山田風太郎 (別冊太陽 日本のこころ)

山田風太郎 (別冊太陽 日本のこころ)

■内容

◇人生とは夢や幻想がさめてゆく過程なり

  • 思うに人生は、夢や幻想がさめてゆく過程だといっていい。親は子に対して、子は親に対して、夫は妻に対して、妻は夫に対して。税金を払うときは国家に対して、死床にあるときは医者に対して。そして自分は自分に対して。それでも大半の人間は不思議に絶望しない。


◇日本の国民性

  • 日本がともかく世界で二流国の位置を保っているのは、ひとえに日本人のオッチョコチョイ性(いわゆる中華思想稀薄で、敏捷無比に外国に飛び付く性分)のたまもの以外ではないと小生は考えている。


◇人生で何をするか

  • 人間、要するに、やりたいことをやり、食べたいものを食って死ぬに限る。


◇人生の道程を見ると

  • 人間は青年で完成し、老いるにしたがって未完成になってゆき、死に至って無となるのだ。

■読後感
山田風太郎は、人を根底から観察し続けた人だ。どうも人というものは若い時分から老いていく過程で怪しくなってくるというところを見抜いている。
人間とはそのような退化の道をふらふらと歩んでいくものであり、死は思わぬ形でやって来るが、それを踏まえた人生の過ごし方というものがあるはずだ。
『人間臨終絵巻』はともすれば失いがちになる死の意識を保ち続けるためのよき相談相手とするべく執筆されたものだろう。