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中島義道『人生に生きる価値はない』新潮文庫、2011年10月

人生に生きる価値はない (新潮文庫)

人生に生きる価値はない (新潮文庫)

■内容【個人的評価:★★−−−】

◇死の恐ろしさは何に由来するか

  • 改めて反省してみると、死ぬことの恐ろしさのほとんどは、客観的世界信仰に基づいていることがわかる。百五十億年前のビッグバンに始まって、これからも延々と続くこの世界に、私はふっとカゲロウのように高々百年の命を与えられ、もうじき永遠に無に帰してしまう、という図式である。そういう世界に視点を置いてみれば、私はまさに「ゴミ」のような存在にすぎない。だが、これに並ぶほど実在的なもう一つの視点があるのではないか。それは「私の内から」という視点である。
  • 最近考えていることは、「私の世界」が客観的世界を破壊することができなくとも、それを相対化し、それと対応の地位を占めれば、ひとまずそれでいいということである。
  • とすると、有名なエピクロスの「死は私と関係がない」という論法も、単なる屁理屈ではなく、見直す価値があるように思われてくる。

■読後感
主観的世界というと、連想的に実存主義という言葉が思い浮かぶが、中島さんは客観世界に晤するものとして主観世界を対置する。
死の恐怖を克服する手段として思い浮かぶのは、仏教の解脱の観念であるが、それとはもう少し違うあり方を中島さんは描いているように見える。しかし、それ自体は、死を忘れたようにしてフツーに過ごすという立場とあまり変わらないようにも思える。
また、恐れない方法を提示しながら、それはもしかしたら単なる諦めでは、という印象もあった。おそらく100年後はもっとよりよい社会理解が実現しているはずだと自分は思う。それにまだ誰も気が付いていないだけなのではと思われるのだ。
一方で巻末の野矢さんの解説にうなずけるところが多かった。いつかは枯れるさ、それまで生きよう、というものである。