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岡崎武志(2013)『蔵書の苦しみ』光文社新書

蔵書の苦しみ (光文社新書)

蔵書の苦しみ (光文社新書)

■内容【個人的評価:★★★★−】

◇明窓浄机こそが読書人の理想

  • 長田弘の対談集『対話の時間』(晶文社)で、養老孟司がこんなことを言っている。「本を読むと蔵書はふえます。それでいながら、明窓浄机、何もないところに本が一冊あって、それを読むというのが本を読む人の理想である。(52ページ)
  • 「明窓浄机」という思想には、どうやら本棚は含まれていないらしい。ある意味、本棚を持つようになった時から、書斎は堕落する。そこに、本を並べたいという所有欲が生まれるからだ。(57ページ)


◇蔵書家の究極の夢

  • 本を美しく整ったかたちで周囲に並べ、本の背中をいつも眺められ、それらにぐるりと囲まれて暮らしたい1.数千冊の蔵書が部屋のあちこちを圧し、家族から白い目で見られている人にとって究極の夢は、「本に囲まれた城のような家」ではないか。(119ページ)


吉田健一の姿勢:書物は五百冊でよい

  • 吉田健一は一貫して、蔵書を多く持たなかったようだ。ただ、その五百冊は、本当に必要な、血肉化した五百冊だった。(151ページ)


◇自炊は蔵書の苦しみを救う?

  • 福岡市で不動産管理業を営むH氏(四十九歳)が、「自炊」で「蔵書の苦しみ」から解放された体験を語っている。「約4200冊あった蔵書は、全て消えました」(183ページ)
  • 「自炊」で「六つの本棚にあふれかえっていた蔵書を、約一年半掛け全部電子化してしまった」(183ページ)
  • 「電子」化で、あっさり「蔵書の苦しみ」から開放される人と、意地になって「苦しみ」を溜め込む人に、この先は分かれていくだろう。(250ページ)

■読後感
本を集めたくなる時期というのは、特に男性にはあるのではないでしょうか。古本屋を巡って、ないと思っていた本を発見した瞬間は得も言われぬ喜びを感じるものです。一般的な本よりは、少しマニアックな本を並べてみたい、人にも見せたいと思ったものでした。
しかし、今では、「発見したい欲望」はありますが、「並べてみたい」とは思わなくなりました。本に囲まれていると安心感ではなく圧迫感があります。手元に置きたい本というのは、その時点時点で異なると思いますし、今読んでいない本はできればアーカイブしておきたいのです。これを実現してくれるのは、地下の書庫か電子化のどちらかではないかと思います。この本の中でも、同じ本を何度も買ってしまう、というくだりが出てきますが、整然とした分類と管理下に置くことを考えるならば、やはり電子化は切り札になるのではないかと思います。
さて、その電子化ですが、自分の体験では一日をフルに使ったとして自炊による電子化ができるのはせいぜい40〜50冊がいいところです。著者の所蔵本を電子化するとなると、3年くらいはかかることになりますね・・・。