和田秀樹(2000)『大人のための勉強法』PHP新書

大人のための勉強法 (PHP新書 (112))

大人のための勉強法 (PHP新書 (112))

■内容【個人的評価:★★★−−】

◇本は、著者の持つとっておきの情報の宝庫

  • 著書というのは、何とか売りたいと思うことや、自分をよくみせたいと思うこともあって、意外に正直に自分のもっているノウハウをさらけ出してしまうものだ。(25ページ)

■コメント「そのとおりだろう。やはり、なるほどと著者自身が納得していることだからこそ伝えたいということにつながるのだと思う。ただ一方でやみくもに字を連ねたがるだけの人もいる。」




◇問題解決にはこれまで蓄積された経験・知識こそが活かされる

  • 人間は新たな問題にぶつかった時に、その解決のためにあれこれと推論を行う。この推論の際に人間の脳は無から有を生むものではない。これまでの経験や習ったことから、現在のシチュエーションや問題に使えそうなことを探してきて、あれが使えるんじゃないか、このやり方のほうがいいんじゃないかとあれこれとシミュレートしてみて、その場での問題を解決するための答えを出すわけである。つまりこれまでの経験や学習によって得られた知識を用いて推論を行うわけだ。ただし、このプロセスが意識されないこともあるので、問題をみてすぐに解法が推論できた場合などに、思いついた、つまり無から有を生んだような気になることがあるのである。(45ページ)

■コメント「さまざまな推論のタネは頭の中にあり、その推論を行うためにはさまざなまチャンネルから得た知識が役に立つ。これは両輪だと思う。つまり、役立てたからこそ自分の体得したものになるという逆説的な関係が仕事には多い。」


◇人間の発達の目標:未熟な依存から成熟した依存へ

  • 自己心理学の祖、ハインツ・コフートの考え方では、人間の発達の目標は、親への依存関係から自立していくというものではなくて、親や別の人間との依存関係を未熟な依存から成熟した依存に変え、周囲の人間を心理的にうまく利用できるようにするというものである。つまり成熟した依存関係がもてることが、対人スキルの発達目標であるわけだ。自己心理学の考え方では、他人への共感能力があって、それを通じて健全な相互依存の関係を作れる人が「心の成長した人」ということになる。これは、取りも直さず、社会生活の中で「頭がいい」とされる条件でもある。(62ページ)

■コメント「著者の学説の背景をなしているところの「自己心理学」では、依存から自立という図式ではなく、依存の態様をどう変化させていくかというところに成熟の図式を見ている。」


◇文章をうまく書く力を身に付けるためには

  • 文章がうまくなるいちばん手っ取り早い方法は、型にはまった文章をたくさん書くことである。型にはまった文章はつまらないと思うかもしれないが、これ以外の方法で、人にわかりやすい文書を作成するのは意外に難しい。また、それ以外のトレーニング法はほとんどない。(150ページ)

■コメント「型にはまった文章というのは構成のはっきりした文章のこと。人に伝える、などの目的を持った文章においてはこの定型文章が一番読みやすい、ということがある。」


◇プレゼンテーションの基本を身に付けるためには

  • 基本的には、型にはまったプレゼンテーションの練習を繰り返すことだ。まず先に問題提起をするか、いきなり結論を述べるかして、次に背景情報や解説を述べる。最後に結論を話せばよい。意外に簡単なことなのだが、実際に練習してみる人は少ないようだ(153ページ)

■コメント「準備には力をかけても、その中で練習というのは軽んじられている傾向にある。愚直なようだが、やってみなければ身に付かない。」