鴻上尚史(2011)『孤独と不安のレッスン』だいわ文庫

孤独と不安のレッスン (だいわ文庫)

孤独と不安のレッスン (だいわ文庫)

■内容【個人的評価:★★★−−】

◇本書の目的

  • この本は、「孤独の価値と素晴らしさ」を語った本です。その内容を、「本当だろうか?本当に、孤独は価値があって素晴らしいんだろうか?」と、本を閉じた後、一人で考えられるのが、「本当の孤独」です。孤独は、つらくて、みじめで、カッコわるくて、恥ずかしい、と思い込んでいるのが「ニセモノの孤独」です。(3〜4ページ)


◇独りになる効用

  • 自分が、「本当は何をしたいのか?」「本当は何を考えているのか?」を知るためには、ちゃんと一定の時間、何もせず、退屈し、孤独になることが必要なのです。(31ページ)
  • 強引に会社や学校を休んで、海に行くのもいいでしょう。大切なことは、浜辺でポーッとできることです。(36ページ)
  • 素敵なことを人から聞いても、役に立つことを本で読んでも、一人でそれをかみしめる時間がないと、自分のものにはなりません。(45ページ)


◇現代日本に残っている伝統的な考え方

  • 「中途半端に壊れた共同体」は、「仲良くすることはとてもいいこと」「友達が多いことはそれだけで価値がある」「友達100人は素晴らしい」という価値観を広めようとします。それは、「中途半端に壊れた共同体」を生き延びさせる方が楽だと思っている人が多いからです。なんでも世間様のせいにしたり、世間に顔向けできないと言ったり、行動の基準を、「世間様に恥ずかしいでしょ」と語る方が、楽で強力なのです。(78ページ)


◇「不安」について

  • 「後ろ向きの不安」とは、あなたを振りまわす不安です。「前向きの不安」は、あなたにエネルギーを与える不安です。(86ページ)


◇孤独と不安からは逃げられないことを自覚すること

  • 『他者』である限り、どんなに愛した人でも、プラスとマイナスの両方がある。そう決意することは、『孤独と不安』から逃げられないと、腹を括ることでもあるのです。『何も言わなくても分かってくれるもう一人の自分』がどこかにいて、あなたを全面的に受け入れてくれる、という考えを捨てることは、『孤独と不安』と共に生きていくと決心することなのです。(156ページ)

■読後感
孤独でなければ深く考えることはできず、自分というものを形成することもできない、したがって、早いうちからそうした環境に身を置く、あるいは無理やりにでもそうした時間を作り出すことの効用を説いている。
人は必ず孤独になる、このことは今いったように大切なことであるが、難しいことでもある。そのためにも少しずつレッスンを積み重ねることなのだと。
意志と経験の力で克服していこうとするひとつの試みとして評価できると思う。