森田ゆり『新・子どもの虐待:生きる力が侵されるとき』岩波ブックレット(No.625)、2004年6月

■内容【個人的評価:★★★−−】

◇外的・内的抑圧とエンパワメント

  • 外的抑圧は比較、いじめ、体罰、虐待とさまざまな形をとりながらも、共通するひとつのメッセージを人に送り続けます。それは「あんたはたいした人間じゃないんだよ」というメッセージです。人はしばしばその外からのメッセージを信じてしまい、みずからを抑圧してしまいます。それをわたしは「内的抑圧」と呼んでいます。「そうか。自分はたいした存在ではない、つまらない人間なのか」と。でも、わたしたちは誰でも皆たいした人間なのです。「あなた」はただ「あなた」であるだけで、もう充分にたいした人間です。生きたいという生命力を持ち、人とつながって生きようとする力を持ち、女である、男である、障害があるないといったあなたならではの個性を持った、かけがえのないたいした人間です。
  • エンパワメントとはこのような外的抑圧をなくすこと、内的抑圧を減らしていくことで、本来持っているもろもろの力(生理的力、人とつながる力、人権という自分を尊重する力、自分を信頼する力など)を取り戻すことです。外的抑圧をなくすためには法律、システムの改革が必要になります。社会の差別意識や偏見を変える啓発活動も不可欠です。内的抑圧をなくすためには、社会から受けた不要なメッセージをひとつひとつとりのぞいていき、あなたの存在の大切さを体得していくことです。エンパワメントとは、誰でもが持っている生命力や個性をふたたび生き生きと息吹かせることです。(26〜27ページ)


◇抑圧を撥ね返すレジリアンシー

  • 援助とは相手が自分のかけがえのなさに気づくよう働きかけ、内的抑圧の方向を逆にするように力を貸すことで、レジリアンシーの活性化を願うことです。(28ページ)


◇子どもの問題解決力を育てるために援助者ができること

  • レジリアンシーという視点から子どもの問題解決力を育てるために援助者ができることをまとめると次の三つになります。子どものエンパワメントの具体的方法と言えるでしょう。
    • 1.気持ちを表現する
    • 2.人の力を借りる
    • 3.行動の選択肢
  • (28〜30ページ)

■読後感
虐待を受けた子どもたちの力をどうやって取り戻させるかに着目した一冊。