阿川佐和子『聞く力:心をひらく35のヒント』文春新書、2012年1月

聞く力―心をひらく35のヒント ((文春新書))

聞く力―心をひらく35のヒント ((文春新書))

■内容【個人的評価:★★★−−】

◇相手の話に集中し、それを伝えること

  • チラチラとメモに目を走らせる落ち着きのない聞き手が前にいると、答えるゲストも落ち着かなくなります。「この人、ちゃんと私の話を聞いているのかしら」と不安が募ってくるでしょう。一対一の言葉のやりとりは、案外、繊細なものです。目の動かし方一つ、息の吐き方一つで、「もしかして、自分との会話を楽しんでいないのかな」と疑心暗鬼になります。そういう不信感を相手に抱かせないためにも、私はできるだけ余計なものを排除して、会話に集中することを心がけます。質問の内容はさておき、「あなたの話をしっかり聞いていますよ」という態度で臨み、きちんと誠意を示すことが、まずはインタビューの基本だと思うからです。(56〜57ページ)


◇反応があるからこそ話がしやすくなる

  • 緊張感に満ちた場面において、もし聞く側の人聞が、ただ静かに黙って聞くだけでなく、ときどき領いたり、プッと吹き出したり、ほくそ笑んだりすると、たちまちスピーカーの舌は潤って、日が輝き出し、ぐんぐん調子が良くなってくるはずです。「自分の話を面白がっている人がいる。ちゃんと聞いて反応してくれている人がいる」そのことを確認したとたん、人は話をしやすくなるものなのです。(110ページ)


◇ひたすら「聞く」

  • 話を聞く。親身になって話を聞く。それは、自分の意見を伝えようとか、自分がどうにかしてあげようとか、そういう欲を捨てて、ただひたすら「開く」ことなのです。相手の話の聞に入れるのは、「ちゃんと聞いていますよ」という合図。あるいは、「もっと聞きたいですねえ」という促しのサインだけ。そうすれば、人は自ずと、内に秘めた想いが言葉となって出てくるのではないでしょうか。(148〜149ページ)

■読後感
インタビュアーとして長く一線で活躍してきた阿川さんによる「聞き方」のコツ。シナリオ通りに進めるのは愚の骨頂。本当に相手が話したい内容をどう引き出すか、というところにもっとも力を入れることの大切さを説いている。