佐々木三男『眠る技術』リュウ・ブックスアステ新書、2003年6月
眠る技術―疲れ・ストレスから解放されるための (リュウ・ブックス―アステ新書)
- 作者: 佐々木三男
- 出版社/メーカー: 経済界
- 発売日: 2003/06
- メディア: 新書
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◇神経性不眠とは
- 齋藤茂太氏の「あまり睡眠時聞を気にする必要はない」という言葉は、不眠に悩む人が是非とも頭に刻んでおくべき言葉である。ひと口で言えば、不眠の原因は不眠を気にしすぎる、眠れないことを恐れるところにあるといっても過言ではない。ここでいう不眠症というのは、専門的に分類すれば「神経性不眠」のケースである。一般に「眠れない」というのはほとんどがこのケースだ。これはとりわけ神経症、精神障害といった病的なものではなく、いわゆる神経質と言われる性格的なものにすぎない。(38ページ)
- 神経性不眠症の人は、よく言えばナイーヴなのである。まず自分をそう肯定的に見て、眠れない自分を悩みのタネにするのはやめることがまず大切である。それから、眠れないこと自体に対して悩まないことだ。中には「眠らないと死ぬのではないか」とさえ考えている人もいるようだが、眠れないために死ぬということは、まずあり得ない。これは様々な断眠実験からもほぼ明らかになっている(41ページ)
- 腹が減れば食物に手を出せばいいが、眠りたい、熟眠したいと願っても「ヒツジが何万匹−」といった具合である。これは睡眠というものが、そもそも意識のラチ外にあるということに根ざしている。つまり「眠ろう」と意識しているあいだは眠っていない(あるいは眠れない)ということだ。ちょっとリクツっぽい言い方をすれば、睡眠というのは「意識しないうちに意識を無くすること」、これをもう少し学問的に表現すれば、「睡眠とは脳活動の一時的低下」ということになる。起こせばまた容易に意識を取り戻すという点で、病的な意識の障害とは区別されるのである。(45ページ)
◇寝付くためのメニュー
- 理論派向きメニュー:まず「重い」、「暖かい」「リラックス」という三つのキーワードを使う。例えば、
- 1「体がだんだん重くなる」
- 2「左手が暖かくなってくる」
- 3 胸がリラックスしてきた」
- 1〜3 の順番はこだわらなくてもいい。とにかく頭の中で、言葉として口ずさんでみることで、身体面を少しずつリラックスさせる。次に「平和」、「穏やか」、「鎮静」、「睡眠」といったキーワードを使う。例えば、
- 1「心の中は平和だ」
- 2「穏やかな気分だ」
- 3「部屋の中は静まりかえっている」
- 4「すぐ眠れそうだ」
- このキーワードで精神面をリラックスさせてゆく。十分ほど時間をかけてやってみるといいだろう。(87ページ)
◇睡眠時刻はスケジュール化し、これを守ること
- では、ひと口に夜間と言ってもどんな時刻がいいのだろうか。理想を言えば、十一時から十二時までのあいだと言えよう。このあいだに床につくという習慣をつけるのが、最も理想的である。もう少し幅をもたせても、十時から午前一時までのあいだに入眠したい。そして、例えば十一時入眠を習慣つけたら、当然それはきちっと守るのが肝心で、やむを得ぬ事情で早めたり遅れたりするにしても、一時間以内の範囲でおさえたいものだ。つまり早くても十時、遅くなっても十二時半までには寝るようにすることである。(117ページ)
- 例えば十時から十二時くらいのあいだにアット・ランダムに寝てみる。そうすればそのあいだの何時頃が、自分にとって入眠しやすいかが、大体つかめてくる。そうやって自分の眠りやすい時刻をつかんだら、それをはずさないように注意する。それでも、なにかの事情でその時刻に就眠できないような場合には、その直後に眠ろうとしても難しい。というのは、睡眠のリズムは二十四時間のサイクルのほかに、どうやら九十分サイクルの睡眠・覚醒のリズムがあるらしいからだ。十一時に入眠時刻を定めた人がその時刻に寝そこなうと、ほぼ十二時半まで寝つきにくいということになる。先に入眠時刻の変動は一時間以内にしたほうがいいと書いたのも、それに関連している。十一時の入眠時刻をとり逃がした場合は、その次の睡眠時刻は九十分後の十二時半頃ということになるが二、三十分を寝付くまでの予備の時間として考えれば、十二時頃には床についたほうが無難ということになる。(118ページ)
- 睡眠時刻のスケジュール化というのは、日々の仕事、余暇の時間の使い方のスケジュール化ということである。つまり腫眠以前の余暇の使い方をいかに規則的にするか、スケジュール化するかということが、睡眠に対する主体性のもち方にかかわってくるということになる。(122ページ)
◇昼寝の効用と注意事項
- 短時間睡眠を自負しながら忙しくしている人の中には、こうした昼寝、いや昼寝に限らず、眠気を催したときはサッと眠る、という意志と技術をもっている人が結構いるのではなかろうか。・・・ただし注意すべきは眠りすぎないこと。昼寝は短時間だからこそ効用があり、長すぎるとかえって頭がボーっとして、いわば寝ボケ状態になる。もともと日中の睡眠にはレム睡眠が少なく、寝すぎると、ノンレムとのバランスが悪い睡眠を長くとることになるからだ。過ぎたるは及ばざるがごとし。ベッドでしっかり眠るなどというのは禁物である。(138〜139ページ)
◇睡眠に関係する食品
- 食品として最も手軽なのは、やはり牛乳だろう。これにはトリプトファンも十分に含まれている。寝る前に牛乳をコップ一杯飲むといったことを習慣にしてもいいだろう。その他パター、チーズなどの乳製品をなるべく摂取するように心がけたいものだ。さらにひじき、切り干し大根、そして大豆などにもカルシウムが含まれている。また、カルシウムを効率よく吸収するにはビタミンDを一緒に摂るといい。しいたけやけずり節などに多く含まれている。こうしたことを頭に入れて、自分なりに「頭のいい睡眠メニュー」を作成してみるといい。ただいずれにせよ、夕食は眠る二時間前には済ませておきたい。(180ページ)
◇よい睡眠の指針
- 最後に、次の十二ヵ条を紹介しよう。二〇〇一年に厚生省の研究班が、よい睡眠の指針をまとめたものである。本書で説明していない部分もあるが(脚のびくつきは無呼吸症候群の症状)、みな大事なポイントなのでぜひ心にとめておいてほしい。題して「眠れるコツ教えます」!
- 睡眠は決して無意味な空白ではない。よい睡眠でよい人生を切り開こう。(212〜213ページ)
この本では睡眠に関する基本的な事項が網羅されています。それぞれたしかに睡眠に深く関係することであり、まずは実践してみることが大切と思います。しかし一方では「睡眠はとても難しい。」と考える私がいます。