本田りえ、露木肇子、熊谷早智子『「モラル・ハラスメント」のすべて』講談社、2013年6月

「モラル・ハラスメント」のすべて  夫の支配から逃れるための実践ガイド (こころライブラリー)

「モラル・ハラスメント」のすべて 夫の支配から逃れるための実践ガイド (こころライブラリー)

■内容【個人的評価:★★−−−】

◇モラル・ハラスメントとは

  • 目に見えるような暴力はなくても、妻は恐怖でがんじがらめになり、夫の一挙一動に怯えています。それは、「人の気持ちを踏みにじって不安にさせる理不尽な態度」や「ささいなことを持ち出して、相手に非があるかのように怒り出す」といったことが、この家庭で日常的に繰り返されているからです。それがモラル・ハラスメントです。(24ページ)


モラハラ夫の特徴

  • 結婚したとたん、ロマンチストからケチ夫に変身
  • 計算高く、自己中心的
  • つねに上から目線
  • 他人にどう見られるかをひどく気にする
  • 弁は立つが、話し合いはできない
  • ダブルバインドでしばりつける
  • 説明なしに無視し続ける
  • すれ違いざま、捨て台詞を吐く
  • マイルールが大好き
  • 人を利用価値で計る
  • えこひいきして、家族を操作する
  • ここぞというとき、迫真の演技をする
  • 子どもに異様に執着する

(46〜57ページ)


モラハラによる精神的な不調

  • 精神的な不調の訴えを左に示しました。相談を受けるなかで、よく聞くものです。生活に支障が出ているときは、どうぞ一人で悩まないで早めに専門家に相談してみてください。
    • イライラ、焦燥感、過剰な警戒心・恐怖心
    • 不眠
    • 気分の落ち込み、意欲・関心の低下
    • 記憶力・思考力・集中力・判断力の低下
    • 自己評価・自尊心の低下
    • 不信感、疎外感
    • 現実逃避願望・希死念慮

(66〜68ページ)


◇警察のDV相談窓口

  • DV相談を受け付ける場所は「生活安全課」です。交番ではなく警察署に出向いて被害の状況を届けてください。モラハラの場合は外傷がありませんので被害届を出すことにはなりませんが、加害者の恫喝、恐喝や、今後身体的暴力を振るわれるのではないかという恐怖心をあおるような言動があれば、DV防止法第8条により、警察の保護などを受けることができます。警察なんて大げさな、と考えず、頼れるところは頼りましょう。また、警察署には相談したという記録を必ず残してもらい、担当警察官には「法的手続きを検討中です」と告げておくとよいでしょう。モラハラは外傷がないために軽く扱われることがあるので、夫婦げんかとして放置されるのを防ぐためです。なお「DV相談証明書」は警察署でも発行してもらえます。ただ、警察署によって対応には差があります。(114ページ)


◇弁護士は何をしてくれるか

  • 弁護士には、具体的に次のようなことを依頼できます。
    • モラ夫との連絡・交渉
    • 離婚調停
    • 離婚裁判
    • 婚姻費用分担請求調停
    • 子どもの引き渡し請求審判・子どもの監護者指定審判およびその保全処分
    • 不動産の保全処分
    • 子どもとの面会交流調停
    • 保護命令

(117〜120ページ)


◇家を出る際に持って出るもの

  • 家を出る際、私物全部の持ち出しが無理な場合は、二度と取り戻せないかもしれないことを覚惜して、取捨選択する必要があります。その際、次のものはぜひ忘れずに持ち出してください。
    • 現金・預金通帳・銀行印・キャッシュカード
    • 生命保険・学資保険などの保険証書
    • 健康保険証
    • モラハラの証拠
    • 思い出の品

(134〜138ページ)


モラハラの証拠はこう集める

  • 前にお話ししたように、モラハラ離婚の難しさの一つに、証拠が少ないことが挙げられます。明らかな証拠の採集は難しいですが、それでもできることはあります。メールであれこれ命令してくる場合は、メールを保存しておきましょう。怒鳴る、侮辱する、脅す、長時間説教する、こまごまと家計のチェックをする。このように言葉を発するモラハラは、できれば録音しておくととても役に立ちます。しかし、事前に予測してレコーダーを準備するのはけっこう大変です。とくに、妻が夫に恐怖心を持っている場合は、夫の生の声の録音にまで気を配るのは本当に難しいことです。もしばれたら、さらに怒りを招くことになり、それを思うと身がすくんでしまうという方もいます。そもそも言葉を発しない「無視」は録音のしようがありません。このように証拠が取れない場合は、モラ夫の言動について日記をつけておいてください。日記には、なるべくモラハラの事実を淡々と書き、さらにその日の客観的事実も記載するようにしてください。もし日記に主観的な思いしか綴られていないと、裁判所が日記の客観性を認めてくれない恐れがあり、努力が水の泡となってしまいます。日記をつけるゆとりがない場合は、せめてスケジュール表を用意して、無視された日に印をつけておいてください。それでも何もないよりは助けになります。(142〜143ページ)


◇親権と監護権

  • 親権とは、一言でいえば、子どもが成年に達するまでの、子どもの生活に関するすべての決定権です。民法は、親権者に子どもの監護および教育をする権利と義務があることを定めています。親権者は、子どもの世話をし、住む場所を決め、学校を選択し、アルバイトの許可をし、子ども名義の財産があればその管理をします。婚姻中は父母が共同して親権を行使しますが、離婚後は父母の一方だけが親権者となります。離婚の際に、もし親権を失ってしまうと、子どもと一緒に生活できなくなったり、子どもの教育に関与できなくなったりします。また、子どもを連れ去ると、誘拐罪に問われることもあります。そんなわけで、離婚の際に子の親権を確保することは、きわめて重要な問題となります。親権者は子どもを監護養育するのが大原則ですが、例外的に、離婚の際に親権と監護権を分けることができます。通常は子どもをおもに養育しているほうが親権者になりますが、なかにはどうしても親権を母親に渡さないと主張するモラ夫がいます。親権はほしいけれど、夫自身は仕事が忙しくて養育できないので、監護は妻にさせてもよいなどと言い出す夫もいます。もし妻がこれを承諾すると、調停で、子どもの親権者は父親、監護養育者は母親という変則的な離婚が成立することになります。ですが、このような条件をのむことはお勧めできません。(158〜159ページ)


◇離婚する際に夫から得る金銭

  • 離婚をするかしないかを判断するにあたり、離婚すると夫からどのくらいの金銭を得られるかを予測しておくことはとても重要です。離婚における金銭請求権としては、養育費、財産分与、慰謝料、年金分割があります。(163ページ)

■読後感