エレン・ペンス、マイケル・ペイマー『暴力男性の教育プログラム』誠信書房、2004年3月

暴力男性の教育プログラム―ドゥルース・モデル

暴力男性の教育プログラム―ドゥルース・モデル

■内容【個人的評価:★★−−−】

◇ドゥルース市でDV男性の更生を行うことになった経緯

  • 逮捕され起訴される者が非常な勢いで増えた結果、ドゥルース市は新たな問題の解決を迫られた。こうした男性たちをどうしたらいいのか。裁判所は、凶悪事件でないかぎり、初犯者を刑務所に入れることに難色を示し、まず更生の機会を与えることにした。私たちは、裁判所から更生命令を受けた男性たちのグループでカウンセラーが使うための手引きとしてつくった教育用カリキュラムを批判的に検討するために、ドメスティック・バイオレンスの被害女性のための運動をしている活動家グループに、ドゥルース市に来てもらえないかと頼んだ。(iiiページ)


◇暴力男性の更生カリキュラム

  • カリキュラムは、以下の五つの目的を達成することで暴力をやめることができるよう、男性たちを援助するために構成されている。
    • 自分の暴力の意図や、そうした暴力行為をなすに至った信念体系について考え、自分の暴力行為がパートナーの行動や考え方や感情を支配する手段であることを理解するよう、参加者を援助すること。
    • パートナーに暴力を振るうに至った文化的および社会的な背景や原因について考えることで、自分の暴力の根源に何があるのか、参加者がよりよく理解できるようにすること。
    • 自分の態度がパートナーとの関係に悪い影響を与えていることを見つめ直し、自分の行動を変えたいという参加者の決意を深めること。
    • 自分の暴力を直視し、それがパートナーや他の人に与えた被害に対して責任をとるよう参加者を手助けすること。そして、暴力で傷つけた相手にきちんと謝罪し説明ができ、変化へのステップを踏み出せるよう、参加者を力づけること。
    • 非支配的で非暴力的な女性との関わり方について考えることで、暴力的な態度をいかに変えるかについての実践的な情報を参加者に提供すること。 (46ページ)


◇更生プログラムのテーマ

  • カリキュラムは八つのテーマにもとづいており、各テーマの学習期間は三週間以上である。それぞれのテーマは、非暴力的で尊敬にもとづく関係を形づくるための要素を示している。八つのテーマは「平等の車輪」に提示されている。「車輪」に示された平等な関係を示す態度や有動は、男性に、平等で互いへの信頼に満ちた女性との関係をつくるために提案されるモデルとなる。「権力と支配の車輪」は、個々の暴力男性が女性との関係において支配を打ち立て維持するために使われる戦術や態度を示している。(48ページ)


◇暴力男性向けプログラムは効果のある場合もあるが、ない場合も多い

  • 暴力男性向けプログラムの成果として、暴力が減ったと答えたのはシェルターの五五%で、四二%は変化なし、四%は増えたと答えた。加害男性による性的暴力に変化が見られないと答えたのは四九%で、四〇%は減った、一一%は増えたと答えた。被害女性の安全については、四七%が変化なしと答え、四二%は高まった、一二%は逆に低くなったと答えた。加害男性による精神的暴力が続いていると答えたのは四六%で、四二%は増加した、一二%は減ったと答えている。(278ページ)

■読後感
更生プログラムについては、アメリカできわめて多くのDV被害があり、逮捕起訴される者が相次いだことに基づき、立案・実施された。しかし、効果のほどはなんとも言い難い。顕著に効果を上げた場合もあれば逆に暴力を増やす=効果がなかった事例もあった。