渡辺京二『気になる人』晶文社、2015年5月

気になる人

気になる人

■内容【個人的評価:★−−−−】

◇自分を見つめ、したいことを見極める−世間の評価から離れる−

  • (渡辺)要するに、自分を見つめてみることだと思う。自分は本当にどうありたいのかということを。結局、今の世の中では、社会がこういうことが価値があるよということに向けて上昇することを自己実現と言っている。それは自分じゃないんですよ。自分を見つめてみて、自分の中にああしたい、こうしたいというのがいろいろあるんだけど、よく見てみると、自分がしたいと思っていることが社会から吹き込まれていることだったということもある。それぞ見極めていくことだと思う。本当に自分がこうありたいということがあれば、それをやっていきたいなら、いろいろあると思う。(42ページ)


◇貧しさの中の嫉妬

  • (磯)昔はみんな貧しかったでしょ。やっぱり貧しさというのは嫉妬を生むんですよ。嫉妬がうずまいていた。豊かになったなと思います。今はさらっとしていて、豊かになったなと思います。(202ページ)

■読後感
世間的な評価基準に自分を合わせ、「成功を求める」や「道を踏み外さない」を旨としていくと、自分の人生とはならず、また、大変窮屈だ。大変難しいことではあるけれども、自分が何をしたいのか、奥底の声に耳を傾けることが必要であることを説いている。
個人的には、そのために大きな絵を描くことができればよいが、それより、毎日のさまざまなことに自分なりに疑問を抱く積み重ねこそがここに到達するための一番の近道であるように思われる。
さて、個人的な視点から見ると、インタビュー形式で書かれているこの本には少し残念なところもありました。まず、最初から同志のような扱いで対談相手にインタビューしてしまっている点です。いきなり相手の取組の肯定や称賛から入ったのは明らかに失敗で、もう少しその人のオリジナリティを深く掘り下げていくべきだと思います。また、自分の価値を押しつけ過ぎているきらいも感じました。それと対話の言葉がくだけすぎていますね。もう少しインタビュアーは控え目であるべきと思います。