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吉本隆明、糸井重里『悪人正機』新潮文庫、2004年12月

■内容【個人的評価:★★★--】

◇文芸は、日々のくらしとつながっていなければならない
  • 学校の研究生とか修士課程の学生とかが書く論文なんかもよくあるけど、実は、あんなものいくら書いたって、文芸にも、また文章にもならんのです。文芸っていうのは、もう、手を抜きにしたら成り立たないもので、いくら頭で考えてもだめなんですよ。 (25ページ)
◇「人助け」について親鸞が言っていること
  • 人助けってことに関してなら、それはやっぱり、親鸞の言っていることが完璧じゃねえかって思ってますね。親鸞は、いかに人間が善意をもって目の前の人を助けようとしても、助けおおせるもんじゃない、と言っているんです。 (33ページ)
◇友だちができる時期
  • 青春期の入りかけの頃っていうのは、生涯の中で唯一、なんかあった時にはお互い助け合える関係の友だちができる可能性のある時期だと思うんですよ。その時期を逃したら、もう、ちょっと不可能だと思いますね。・・・この純粋ごっこの時期を除けば、結局、この世は全部ひとりひとりだよってことなんですよ。 (38~39ページ)
◇仕事とは
  • 結論から言ったら、人間というのは、やっぱり二四時間遊んで暮らせてね、それで好きなことやって好きなとこ行って、というのが理想なんだと、僕は思うんだけど。ええと、ほら、僕らの世代の人たちで、ちょっと左翼っ気のある人なんかだと、「労働は大切だ」って言うでしょう?そうすると、その極まるところがどうなるかっていうと、清く貧しくっていう思想になっていくわけです。・・・つまり、働くってことは、あんまりいいことじゃないってことを言いたいわけです。 (65、66ページ)
◇理想の上司とは
  • あんまり文句言わないってことが、ひとつの条件なんでしょうね。それから、何だろう?よくできるっていうか、こいつ、何でも知ってやがんなっていうくらい仕事がよくできるっているのもあるんでしょうね。ただ、得てして、何でもよくできる人は細かいことを言いますね。細かく指示したり、こうしなさいああしなさいって言うことがありますけどね。 ・・・僕は自分でダメだなあって思っているんですけれど、部下の立場の人にものを頼んだとしてさ、まあ、それを部下がやってないとか、できてないってことがあったとしましょう。そういう時に「じゃあ、俺がやるからいいや」ってなっちゃうんですね。怒ったりせずに、黙って自分がやればいいって発想になっちゃうんです。これは、上司っていうか、リーダーとしては失格なんじゃないでしょうかね。理想のリーダーってのは、さっきの質問の答えじゃないけど、自由な雰囲気をつくれて、強制してるって感じじゃないんだけど、仕事をやらせちゃうみたいな人でなければならないんでしょうね。(85ページ)
◇テレビを見るのは
  • 結局、僕がテレビをつけっぱなしにしているのは、さみしいからじゃないかな。・・・縁日の雑踏の中にひとりでいる、そういう状態が妙に居心地いいんだってのと似た感じ、ありますよね。(233、234ページ)

■読後感

吉本さんは、自分自身や自分の暮らしに足を置き、自分の考えに基づいてぽつりぽつりと話をしている。自分があるからどんなことでも多く、少なく語ることができる。

この本では、生きる、ということや、人助けをする、など広くいろいろなことが語らいのテーマとなっているけれど、自分というものを高めつつも、怪しげな風潮に左右されず、人には自由に動いてもらえるような、そんな人を目指しているように思われた。