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鈴木大介『脳が壊れた』新潮新書、2016年6月

 

脳が壊れた (新潮新書)

脳が壊れた (新潮新書)

 

 

■内容【個人的評価:★★---】

高次脳機能障害の発症
  • 二〇一五年初夏、四十一歳で右脳に脳梗塞を発症した僕は、身体への後遺症は軽かったものの、いくつかの高次脳機能障害(高次脳) が残ってしまいました。 高次脳機能障害とは、脳梗塞=脳の血管に血の塊が詰まって脳細胞が損傷することで起きる障害の一群で、手足など身体の麻痺とは別に様々な問題が起きてくることを言います。(7ページ)
◇手を差し伸べるべき人々
  • 僕はこれまでの著書に「苦しい、助けてと口に出せないひとたち」「そうは見えないけど実は苦しいひとたち」にこそ救いの手を差し伸べるべきだと主張してきました。 脳梗塞発症後、入院病棟のベッドの上、朦朧とする意識と非日常的で異様な世界観の中で、自然とノートパソコンのキーボードへの入力が始まりました。(10ページ)
脳卒中の治療とは
  • 脳卒中(脳梗塞脳出血など)の発症後の治療には、いくつかの柱がある。 第一に脳外科医が担当するのが、障害の原因となった脳卒中の「病因除去」、つまり血栓や出血などを手術や投薬で解消することで、これが発症後の緊急医療行為となる。 そして第二の柱は「再発リスクの確認」。脳カテーテルMRIなど様々な検査を行うことで、そもそも脳の血管の形状、血栓ができ易い不整脈等々、器質的に脳卒中を再発しやすい所見がないかを見極める。 場合によっては、脳内の血管にバイパス手術を施すなどして、再発リスクに対策することも含む。 加えて、入院生活、退院後の家庭生活の中での食事の制限・指導や投薬で、血圧や血液の状態を管理する「再発予防」が、第三の柱。 ところが残念なことに、脳細胞は不可逆と言われていて、一度血液が巡らなくなって死滅してしまった脳細胞は、いかなる手術によっても投薬によっても生き返るということはない。 そこで最後、第四の柱が、「失われた脳細胞」ではなく、「失われた機能」の回復を目指す、リハビリテーション医療だ。僕の場合は幸いにも器質的な再発リスクはさほど高くなかったので、治療の主役は何といっても、言一語聴覚療法、作業療法理学療法の三分野でリハビリテーションを指導してくれる療法士の先生たちだった。(60~61ページ)
◇ 自己管理と節制には自信があるつもりだったのだが・・・
  • 生活上の自己管理と節制には自信があるつもりだった。漫画の打ち合わせなどで帰宅が午前様になっても、何時に寝ても朝は八時には起きて自宅仕事部屋で業務開始というのが毎日の習慣。とはいえ、無理に起きるのではなく、たとえ二~三時間しか睡眠できてなくても毎日同じ時間に確実に目が覚める体質だった。足りない睡眠は日中に仮眠を加えることでコンディションを維持してきた。 食生活は減塩以外の規制はしていなかったが、自宅自営業で基本は自炊。飲食店の厨房勤務経験があるしもともと料理も栄養管理も好きなので、三食必須栄養素を満たしたメニューを作ってきたつもりだった。(146ページ)
◇人の縁こそ
  • そのネットが一切なかったら障害の辛さに負けてあっさりと自死の追を選んでいたかもしれない。その「ネット」とは、人の縁である。(207ページ)
  • 改めて主張したいのは、人の縁は具体的な資産だということ。そして孤独とは、特に高次脳や類似する様々な脳疾患のように「見えづらい苦しさ」を抱える者にとっての孤独とは、想像以上に具体的で生死に関わるリスクだということだ。(218ページ)

■読後感

著者は、社会的弱者の中でも、とくに自分から声をあげられない人々に接し、その声を自らの著書の中で届けてきた。

自分も脳梗塞による障害を持つ中で、さまざまな過信を反省しつつ、最後に支えとなるのは人のつながりであるという事実を改めて発見している。