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佐々木常夫『上司の心得:決定版』角川新書、2015年12月

 

決定版 上司の心得 (角川新書)

決定版 上司の心得 (角川新書)

 

 

■内容【個人的評価:★★★★★】

◇ 仕事には不条理もあるが自分を成長させてくれるもの
  • ビジネスは常に個人対外部の関係性の中で進んでいくものだ。組織の中で生きていく以上、不平等も不条理もなくなることはない。 一方で仕事は、面白さややりがいを感じたり、成功や挫折を経験する中で一人ひとりの人生を方向づけていく。仕事とは、他者との関わり合いの中で自分の人生を刻んでいく道程なのである。これもまた不変であろう。(4ページ)
◇仕事にあたっては「ものの道理」を大切にすること
  • 仕事にそれなりの野心と向上心を持って臨み、仕事を通して豊かな人生を送りたいと願うなら、なるべく対象や自分自身を客観視し、ものの道理に立ち返って考え行動することである。それができれば、何かの問題にぶち当たりどうするべきか迷ったとき、答えを出すのはそれほど難しいものではない。変化の激しい時代には、そうした態度がより一層大切になるだろう。 (4~5ページ)
◇ 自分の活躍場と決めた以上は一生懸命がんばる
  • どんな会社に勤めていようと、一番大切なのは自分であって会社ではない。だから、もし今の会社がどうしても自分に合わなかったら辞めればいい。それは誰にも止められないことだ。 しかし一度そこを自分の活躍の場と決めた以上は、会社のために必死にがんばるべきだ。その舞台で自分に与えられた役割を精一杯演じたうえで、どんなに努力してもそこでは自己実現できないと分かったときには、自分の立つべき別の舞台を探すしかない。 そういう意味で、自分が一番なのである。(33~34ページ)
◇ 仕事は理論では進まない。決裁者の背中を最後に押すのは現実直視と信念である
  • 実際のところ、当事者として日々ヒリヒリするような決断を下している立場の人間が、「事業性は市場成長性と市場占有率で」「選択と集中が重要」といった理論のみによって結論など導き出せるものではない。ビジネスとは、市場のおかれた状況、経営者及び担当するスタッフの士気、競争相手の強弱、自社の保有する技術レベルなど、さまざまに複雑な要因が絡みあう「生きもの」である。もちろん経営のセオリーは活用するが、決裁者の背中を最後に押すのは「現実直視と信念」であろう。(51ページ)
◇ 与えられた使命を全うすること
  • 「人は何のために生きるのか」などと、こちらから問えるものではない。「人生から問われていること」に全力で応えていく。つまり「自分の人生に与えられた使命をまっとうすること」だけが、人間に唯一できることなのではないだろうか。(58ページ)
◇ もうだめだという苦境で
  • もうだめだ、という苦境のとき「あとひと踏ん張りがんばろう」と言える人。 みんなが尻込みをしているときに「私が行こう」と言える人。 彼らはそのとき、リーダーである。「リーダー不在」を入ごとのように語る前に、自分にできることは何かを一人ひとりが考えはじめたとき、そこに新しいリーダーが誕生するのである。(66ページ)
◇ 上司の大切な使命
  • 組織を預かる上司には大切な使命が二つある。 その一つは、自分に与えられた業務目標を達成すること。 もう一つは、自分の組織の中にいる部下を監督し成長させること。 前者は当たり前のことである。仕事で結果を出すことこそ会社員の使命であり、その人の評価につながるものだ。リーダーともなれば、言われずとも組織として成果を上げることに熱心に取り組むだろう。 それに対して、後者の意味を正しく理解し、自分の使命だと考えている人は意外に多くはない。だが、この「部下たちを適切に指導し、その成長に貢献すること」は、組織を率いる人間としての最重要課題なのである。(68ページ)
  • 上司が重点的に気をかけなければいけないのは、少し遅れ気味の部下、外れ者の部下、苦労している部下である。そういう部下は、手間はかかるかもしれないが、少し手を差し伸べれば、2~3割は容易に伸びる。そうすることで組織を構成するメンバー全体の力を伸ばし、組織の底上げができる。結果として、与えられた業務目標を、組織として達成することができるのである。これぞ上司の本懐である。 組織の中で大きく伸びていく人材の多くは、新入社員時代にどんな部署の誰が上司であったかということが大きく影響するといわれる。まだ仕事というものがよくわかっていないとき「会社というのは……」「仕事とはこうするのだ」と的確に教えてもらえたかどうかが、その人の仕事人生を大きく左右するということだ。(70ページ)
◇ マネジメントとは
  • マネジメントとは断つこと、捨てることである。もちろんそこには合理性が求められる。ポイントは三つ。一、計画性を持って重要度の高い仕事から順に片付けること。 二、最短ルートを見つけてすばやく進めること。 三、仕事は結果がすべてだと心得ること。(86ページ)
◇ 部下が上司に見ているもの
  • 部下は、上司の中に見え隠れする仕事への熱い想いや、自分の欲ではなくその組織やお客さまに献身する姿に共感するのである。そしてこの人に力を貸したい、力になりたいと思ったとき、はじめて上司は本当のリーダーシップを発揮することができるのである。(88ページ)
◇ 異端者は重要。だが・・・
  • いかに異端であっても、たとえば時間にルーズであったり、つぷ敬語も使わず、ほかのメンバーに迷惑をかけるのであれば、そこに目を瞑ってはいけない。メンバーが協力し合いながら、気持ちよく仕事をしていくための最低限のルールは守らせなくてはならない。(100ページ)
◇ 態度が改まらない部下
  • もし、何度注意しても態度が改まらない部下がいたとしたら、それは彼が君の言葉を受け入れていない証拠である。 部下に受け入れられない上司の率いるチームが、十分な成果を上げられるはずもない。 その部下を責める前に、なぜ彼がそのような態度を取るのか、上司である自分の胸に手を当てて考えてみる必要がある。(106ページ)
◇ 多読ではなく、精読しよう
  • 多読家に仕事の出来る人は少ない。なぜかといえば、読んで満足してしまい、自分の血肉にしない人が多いからである。大切なことは、読んだ本の数ではなく、読んだ本をどれだけ自分の生き方に結びつけられたかということである。(144ページ)
◇ 知識だけではだめ、自分の日常に落とし込んで実践すること
  • 人は、知識を得ただけでは成長しない。私の本を読んだり、研修を受けた人はみな「とてもためになった」「有意義だった」と言ってくれるが、多くの人はそう言って終わりである。話を聞いただけで満足してしまい、実行しないのである。この本とて同じこと。自分の日常に落とし込んで実践しない限り、残念ながら何の役にも立たないだろう。(146ページ)
◇ 社会人として最初に学ぶべきこと
  • 社会人が最初に学ばなければならないこととは何か。それは極めて単純なことである。 人間として正しいことをすることだ。およそ人が生きていく上で大切なことは難しいことではなく、ごく単純な「原理原則」を行うことである。では、原理原則とは何か。それは前述したように本来なら家庭でしつけられるべきことと同じだ。嘘はつかないこと。 約束は守ること。礼儀正しくすること。間違ったら謝ること。なぜなら仕事とは信頼の上に成り立つものだからである。(158ページ)
◇ 事務はシンプルをもって
  • 部下には、事務処理、管理、資料はシンプルをもって秀とすることを教えよう。複雑さは仕事を私物化させやすくし、後任者あるいは他者への伝達を困難にさせるものだ。 仕事の効率アップには、整理整頓も不可欠だ。机の上が散らかり、ホルダーの整理がされていないと、資料を探すロスの他に、見つからずに結局は一から仕事をスタートするという愚を犯すことがある。(168ページ)

■読後感

リーダーとして行うべきことは、業務目標の達成と部下の成長であり、とりわけ後者にどれだけ力を入れて臨めるかが大切であることを説いている。

また、一社会人として基本的なルールを守り、原理原則に忠実でありながら、自分が先頭に立ち、火の粉をかぶるつもりで仕事にあたることが肝要としている。

この書は、社会人として修羅場を経験しながらも、きちんと自らの家庭や部下に対してもきちんと向き合ってきた著者の人柄がよく伝わってくる秀作であると思う。