角幡唯介『空白の五マイル』集英社、2012年9月

 

 ■読後感

ヤル・ツァンポー=ブラマプトラ川の人跡未踏の五マイルについて、著者自らが探検を試みた記録である。

この本のすばらしいところは、リヴィングストンなど名だたる探検家たちがアフリカや極地を探索し、ほとんど世界の空白地帯を解消したところだが、依然として人跡未踏のまま残された土地を21世紀のわれわれの世代が探検する、というところにある。

このヤル川(ツァンポー川中流の屈曲地帯については、19世紀のキントゥプから始まり、20世紀初めまで探検が行われたが、いったん中断され、これが1990年代になってアメリカの探検家により改めて取り組まれるといった息の長い挑戦が繰り返されている。

この探検を、ふと書店で関連書籍を手に取った大学生が、学生時代のみならず、いったんついた新聞社の仕事を捨ててまで取り組み、生死の境をさまよう探検を行っているところに大いに惹かれるところがあった。