リチャード・ギル『経済発展論』東洋経済、1965年6月

経済発展論 (現代経済学叢書)

経済発展論 (現代経済学叢書)

■読むきっかけ

  • シンプルな経済学上の到達点・原理をサーヴェイする

■内容【個人的評価:★★★−−】

  • 人口の増加はなぜ経済に寄与するのか
    • →最小限の道具を用い、本質的には昔ながらのやり方にしたがって働く労働が疑いもなく人類の最大の生産的資産であったから(ただし生産年齢人口と従属人口のどちらが増えているのかは注意すべきポイント)
  • 資本とは、人の作った生産手段の貯えであり、建物、工場、機械、器具、装置、在庫品を含む(金融資産ではない)。資本蓄積と投資は同義語
  • 無形資本(蓄積された知識、熟練、技術などの貯え)が経済発展において果たす役割は有形資本にまったく劣らないほど重要
  • 資本主義という言葉を共産主義の対義語としてとらえるのは不適切。欧米と共産主義の違いは、資本蓄積とその所有が民間個人が行うか国家が行うかの違いである
  • 分業することによりもたらされる大規模生産、これは市場の広がりをもとに拡張する
  • 技術進歩、近代以前も行われてきたわけだが、新技術の流れの速さ、深さ、持続性が現代では顕著。発明と実用化である革新のプロセスが経済発展につながる。経済的リーダーシップである企業者の存在も重要
  • 貧困は経済成長の多くの重大な障害の根源となる。一方近代的経済成長はいったん軌道に乗れば自己維持的になる傾向がある。慢性的貧困から持続的成長へ移る際は離陸、産業革命、ビッグ・プッシュが必要
  • 古典派では、収穫逓減のモデルを掲げており、これは現代の低開発国にはあてはまるが、近代的経済成長は説明できなかった
  • 過去における始動は以下のプロセスをたどっている
    • 1.経済的・社会的・政治的変化を伴う準備期間
    • 2.技術進歩の速度の急速な上昇
    • 3.資本使用量の増加、より大規模な生産単位の出現、機械化と分業の進展に対する労働力の適応、企業家活動の興隆
  • ただし、2については自力か借用技術かという違いがある
  • ヨーロッパでは準備期間に内外通商の拡大、都市化に伴い、商業、手工業が繁栄し始めた
  • 始めに産業革命を成し遂げたイギリスでは、きわめて準備期間が長い、したがって産業「革命」というより「進化」という言葉が近い
  • 後発諸国において先発諸国より負担が小さいというわけではない。既存の社会・政治・経済制度が根底からゆさぶられることとなった
  • イギリスの場合、繊維工業が先導者であったが、後続諸国では、鉄道が決定的な重要性を持った。広大な市場地域を統一し、すべての産業に費用逓減をもたらした
  • 鉄道は個人ではその敷設に必要な資本を準備できない。国家主導の経済発展の図式である
  • ロシアのケース:国家の指導の元強力に経済発展が進められたが、計画経済であり工業偏重だった。本来の自然な経済成長で伸びるはずの農業や一般消費財産業が伸びなかったという特性をもっている
  • もっとも重要な要因は技術進歩である
    • →近代経済成長の中で人間の頭の中に知識が蓄積されで新しいものが作り出され、実用化するプロセスが結果としてみた経済成長においてもっとも大きいということ。
  • 小さなインフレは経済成長のインセンティブとなる。投資した資本に対する期待収益が大きくなるためである
  • 農業と工業のつり合いの取れた成長を行うべきか、工業中心でいくべきなのかは決着がついていない。相互依存関係がある以上、工業のみの発展はあり得ないとする立場と、緊張を作り出すことが生産増につながるとする立場がある。