スタニスワフ・レム『ソラリスの陽のもとに』ハヤカワ文庫、1977年4月

 

ソラリスの陽のもとに (ハヤカワ文庫 SF 237)

ソラリスの陽のもとに (ハヤカワ文庫 SF 237)

 

 ■読後感

映画『惑星ソラリス』(アンドレイ・タルコフスキー)を驚きをもって観たのが2012年だったのでもう5年半ほど前になる。最近、NHKテレビでも教育番組の題材として取り上げられたせいか、再度光が当たりつつあるところであり、この機会に翻訳本にあたってみた。

原作におけるストーリー展開は、タルコフスキー作品とは重ならないところが多くあり、映画では長い時間を割いていた地球での生活などは一切登場しない。また、どちらかといえば宗教的とも言える映画に対し、クリスやハリーの心理描写やソラリスを科学的に捉えようとする取組が詳述された内容となっている。

ブレードランナー』のレイチェルが目覚める自我とこれによって抱くことになる不安は本作のハリーに通じるもので、敷衍して言えば『2001年宇宙の旅』におけるHAL9000についてもタイプこそ違え、自ら思考する人工知能を人間ととらえるのか、それともマシンととらえるのか、という哲学的な命題にかかわるものである。

まだ宇宙への進出を果たしていなかった1961年の時点で、この課題に着目し、作品化したレムの力に驚かされる。