佐藤哲『行政法』TAC出版、2001年11月

公務員試験速攻ゼミ 行政法 (TAC on LIVE)

公務員試験速攻ゼミ 行政法 (TAC on LIVE)

■読むきっかけ

  • 研修のおさらい
  • 基本的な枠組みではあるが、たまに勉強しておかないと身に付かない

■内容【個人的評価:★★★−−】
○1.「行政法の骨格」

  • 行政法の3つの柱は以下のとおり
    • 1.行政組織法
    • 2.行政作用法
    • 3.行政救済法
  • いいかえれば、どういう組織が、どういう方法で行政活動を行い、不利益が生じたときにどう救済するのかということ。
  • だれが行政を行うか、それは行政主体>行政機関>行政庁である。
    • 1.行政主体:国及び地方公共団体
    • 2.行政機関:行政主体の手足として活動する人(例:税務署長)
    • 3.行政庁:行政主体の意思を決定し外部に対し表示する行政機関(例:税務署長)
  • 法律は行政に対し優位である。以下の3つの原則がある。
    • 1.法律の優位原則:行政は法律に違反できない
    • 2.法律の留保原則:行政活動には根拠法が必要である
    • 3.法律の専権的法規創造力の原則:法規(国民の権利義務に関する定め)は法律によらなければならない
  • 法律の留保には、侵害留保、権力留保、全部留保がある。
    • 1.侵害留保:自由と財産を侵害する行政活動のみ根拠法が必要
    • 2.権力留保:権力的な行政活動のみ根拠法が必要
    • 3.全部留保:あらゆる行政活動に根拠法が必要
  • 課税や土地の強制収用にはどの学説でも根拠法が必要となるが、補助金交付決定は侵害留保説では根拠法不要、行政契約は権力留保では根拠法不要となる。
  • 行政行為とは、権力的かつ対外的かつ個別・具体的かつ法的行為である。
    • 1.下命:作為を義務付ける内容の処分
    • 2.禁止:不作為を義務付ける内容の処分
    • 3.許可:一般的な禁止を個別に解除する内容の処分
  • これらに裁決・決定を加えたものが行政行為である。逆に行政契約、行政指導、訓令・通達、行政立法は行政行為の効力は生じない。
  • 行政行為の持つ効力とは何か
    • 1.公定力:行政行為はたとえそれが違法であっても取消されるまでは一応有効
    • 2.不可争力:処分から一定期間が経過した後は取消ができない
    • 3.自力執行力:行政は私人に課せられた義務を代わって執行できる(強制執行など、ただし行政行為の根拠法とは別の自力執行のための根拠法が必要となる)
    • 4.不可変更力:裁決庁は自分の出した裁決を変えることができない(ただし、不許可処分の取消など、職権取消しはできる)
  • 行政行為は義務付けする行為であるが、これを履行しない者に対し義務を強制的に実現することができる。(行政の強制力行使)
    • 1.義務の不履行があった場合
      • (1)行政上の強制執行
        • ア.行政代執行(義務者本人になり代わって義務を履行する)
        • イ.強制徴収(金銭給付義務の不履行に対する財産差し押さえ、競売)
        • ウ.直接強制(感染症り患者の強制隔離など)
        • エ.執行罰(義務内容を実現させるための罰金、〜しなければ○○円払え)
      • (2)行政罰
        • ア.行政刑罰(重大な義務違反に対する重い罰)
        • イ.秩序罰(手続き違反など、過料)
    • 2.義務を課さず直ちに強制
      • 即時強制(破壊消防など)
  • 国家賠償法
    • 1.公権力責任(1条):公権力の行使に当たっての公務員の違法な行為(故意または過失)が原因
    • 2.営造物責任(2条):危険なもの(穴のあいた道路、公園の欠陥遊具等)が原因
  • 被害者は公務員個人に対して直接損害賠償請求することはできない。故意または重大な過失があった場合行政主体の公務員個人に対する求償権が発生する。
  • 取消訴訟行政処分または裁決・決定の取消を求めるもの。行政処分は、
    • 1.権力的行為である
    • 2.対外的行為である
    • 3.個別・具体的行為である
  • という属性を備えていなければならない。このため、行政指導は取消処分の対象とはならない。
  • 行政手続法:国家賠償や取消訴訟は事後的な救済(行政救済法)であるが、そうしたことの起きないように事前に権利自由を保護することを目的としている。行政手続法で定めているのは以下の手続き内容である。
    • 1.行政処分(申請処分手続、不利益処分手続)
      • (1)申請処分手続
        • ア 審査基準の設定・公表義務
        • イ 審査・応答義務
        • ウ (拒否する際の)理由提示義務
      • (2)不利益処分手続
        • ア 聴聞手続
        • イ 弁明手続
    • 2.行政指導
    • 3.届出
  • 地方が行う行政活動には行政手続法は及ばない。ただし38条において行政手続条例を定めるように努めると規定されている。

○2「行政法の基礎」

  • 重大かつ明白な瑕疵の具体例
    • 1.主体の瑕疵:無権限者による処分など
    • 2.内容の瑕疵:内容が不明確な処分
    • 3.手続の瑕疵:公開の聴聞や弁明を欠く処分
    • 4.形式の瑕疵:書面でなく口頭による処分
  • 無効な行政行為ははじめから行政行為の効力が発生しないが、取消・撤回などで効力がなくなる場合がある。
    • 1.取消:成立当初から違法または不当である場合。取消により遡って無効となる。処分庁のみならず監督庁、裁判所、不服審査庁が取消権者
    • 2.撤回:瑕疵なく成立した行政行為の効力を、事情の変化により執行させる意思表示。将来的に無効
  • となる。処分庁が撤回権者。
  • 行政裁量
    • 1.き束行為:法律によって明確に規定され、形式的・機械的に運用できる行為。司法の審査が可能
    • 2.裁量行為:法律が幅を持って定めている行為。司法審査は原則として不可能。ただし、法律の客観的な基準があるものについては、司法審査が可能。また、それ以外の自由裁量行為であっても、裁量のゆ越・濫用があれば違法となる。
  • 行政立法:行政機関が法を作ること(例:厚生労働大臣の定める保護基準)
    • 1.法規命令
      • (1)委任命令:権利義務の内容を定める(個別具体的な法律の委任が必要)
      • (2)執行命令:細目的事項を定める(一般的な法律の委任で足りる)
    • 2.行政規則:権利義務とは無関係の行政内部の取り決め(法律の委任不要)
  • 行政契約
    • 1.私法契約:物品購入契約
    • 2.公法上の契約:公益を目的とした契約。道路用地提供の契約など
  • 行政計画:具体的な行政目標とその実現のための施策を体系的に示したもの。拘束的な計画には根拠法が必要。
  • 行政指導:非権力的行為であり、根拠法は必要としない。協力を求めるもの。
  • 行政上の不服申立:行政不服審査法による。行政処分のみならず法に定められた手続を行わないという不作為も対象となる。
  • 行政上の処分を行うに当たっては、以下の内容を教示する義務がある。
    • 1.不服申立ができること
    • 2.不服申立をなすべき行政庁
    • 3.不服申立期間