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八木紀一郎、宇仁宏幸『図解雑学 資本主義のしくみ』ナツメ社、2003年5月

図解雑学 資本主義のしくみ (図解雑学シリーズ)

図解雑学 資本主義のしくみ (図解雑学シリーズ)

■内容【個人的評価:★★★−−】
○第一章「資本主義は神か悪魔か?」

  • 資本主義を一言でいうと、経済活動が資本に基づいて行われ、またその成果も資本の蓄積に結びつくような社会の仕組みである。このため、資本主義のもとでは、経済活動は人間のためではなく、あたかも人間が資本に奉仕する活動のようになる。
  • 資本主義には、市場での競争などのように、資本の本性にしたがうことを人々に強制する機構が備わっている。
  • 資本主義は直接には社会の客観的なしくみを意味するが、間接的にはこの仕組みに伴って生じる、あるいはこの仕組みを支える多様な制度・意識・思想・文化を意味する。
  • たとえば製造業の企業のある時点での資産をすべて調べ上げると(貸借対照表)、現金・預金・債権・製品・仕掛品・原材料・機械・建物・知的所有権・投資証券等々があげられるがこれが100億円あったとすれば、この価値額がこの企業の使用総資本である。しかし、この企業は短期・長期で50億円の負債を持っているかもしれない。これを差し引いたものが会計上所有者に帰属する資本(自己資本)である。
  • 資本主義に対置されるものとして社会主義がある。社会主義(あるいは私有財産制を否定して使う場合の共産主義)は、指令により経済資源を動員するものであり、資源開発や重工業には効果的であったが、市場的取引になじむ農業、消費財・サービス産業には適合しなかった。1990年代には計画経済は放棄された。いっぽう資本主義には、資本優位の傾向を批判・政策により制限しようとするしくみ(労働組合社会福祉政策)が定着している。
  • イスラムでは、私有財産、貨幣、商取引を是認するが、資本が資本を生むことについては認めていない。
  • スミスは、分業による生産性により豊かさが社会の底辺にまで及ぶと考えた。また、この分業と専門化を実現するには資本=生活・生産を支える物資が必要であると考えた。資本所有者はそこから最大限の利潤を生み出すことを求める。この活動が見えざる手により雇用を増やし、生産を増大させ、社会全体の利益を増進する。
  • いっぽうマルクスは、資本主義は利潤を生み出すために旧来のすべての関係を金銭的関係に変え、地域的な経済を世界市場に統合する。無政府状態であるため、絶えず過剰生産と恐慌が起こり、大量の倒産と失業が起き、階級が二分化し、労働者階級は増加する一方で生活水準は絶えず下方に押し下げられると考えた。
  • 近代西洋の資本主義については、欲望の解放を重視する見方があったが、マックス・ウェーバーはこれとは逆に禁欲による蓄積を重視する見方をとった。合理的で持続的な経営を可能にする倫理的態度が資本主義には必要と考えた。しかし、資本主義が進むにつれ、法、官僚機構、学問、文化などの合理化を生み、内面的な主体性による合理性はなくなり、外部への適応を行っているに過ぎなくなる。
  • シュンペーターは、資本主義のダイナミズムは、革新=新製品、新生産方法、新市場であり、革新を追求する企業者であると考えた。また、この創造活動は企業自体が行う形となり、規制ある組織資本主義=社会主義へ移行していくと考えた。
  • ケインズは、金もうけはそれ自体称賛されるべきものではないが、略奪や征服に比べればましであり、これを規則に従ったゲームに変えることが必要と考えた。また、投資家が金融資産の保全のため行動すると、完全雇用が実現できず、マネーゲームに巻き込まれる。投資には社会的制御が必要であり、管理通貨制度と積極的な財政・金融政策が必要と考えた。資本主義の統御のためには国際的な協調も必要であり、これにより富に奉仕する資本主義の文明は終わる。
  • ハイエクは、資本主義は、価格というシグナルを利用し、国家ではなく個人が自分の知識を利用して生産・消費するシステムであり、またこの行動と慣習からルールを生み出すと考えた。この秩序に適合する法の支配を確立することが政治の課題である。
  • ジョージ・ソロスは投機家であるが、グローバル資本主義は本質的に不安定な仕組みであり、取引のルールの確立が重要と考えた。一方アマルティア・センは、市場に任せておいては飢餓問題は解消しない、民主主義による政府の適切な介入が必要と考えた。

○第二章「資本主義の基本要素」

  • 国家は利潤目当てではなく、権力的要素を備えた非資本主義的組織である。
  • 国家の古典的役割としては、法その他の規則を定め、司法活動(警察、裁判、執行)によりこれに基づいた活動を保護する。また、インフラや環境維持、保健衛生、基礎教育、単位や度量衡など経済活動の基礎となる部分を整備する。また、階級対立や地域対立の解決に当たる。

○第三章「資本主義経済の動き方」

  • 一国の豊かさを決定するのは、生産的な労働者の割合と、一人あたりの労働の生産性である。

○第五章「資本主義の大転換〜現在」

  • 政府支出の規模を不況のときは比較的大きく、好況のときは比較的小さくすることがケインズ主義の理念であるが、政府支出を不況時に増やすことはできても、好況時に減らすことは難しい。公務員の雇用数や公共投資の発注量を好況期に減らすことはできないためである。

■読後感
ウェーバーは、社会の合理化とともに人間が自ら作り上げる内面の合理性は薄れていくと考えているが、現代社会はまさにその姿を呈していると言えるのではないか。法律を作るときには、この合理性をよくよく検討するという過程があったはずだが、法とそれに基づく制度が運用段階に入ると、これをつくった当時の社会的状況やそこで下された判断は思い起こされることはない。