中野収『気になる人のための記号論入門』ごま書房、1984年3月
気になる人のための記号論入門―気になる現象を明快に解き明かす最先端の"考え方" (ゴマセレクト)
- 作者: 中野収
- 出版社/メーカー: ごま書房
- 発売日: 1984/01
- メディア: 新書
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- 「き」という文字あるいは音はそれ自体物理現象に過ぎないが、それが庭先に生えている木を指示するためには、「き」=木という等式が成立しており、社会的に合意されていなければならない。この等式関係を記号論ではコードと呼んでいる。そして左辺をシニフィアン(記号表現)、右辺をシニフィエ(記号内容)という。
- チチキトクという電報文では、「父親の病が重い」という直接的な意味(デノテーション)、のほか「早く帰郷しなさい」という間接的な意味(コノテーション)を含んでいる。コノテーションは、場合によっていくつかの階層を含んでいる。
- 糸井重里の「おいしい生活」という広告コピーは、「生活」という言葉の形容詞として使われない「おいしい」を使い、現代の生活に足りないものへの提案になっている。形容詞の集まりをパラダイム(範列)というが、これを入れ替えることで思考をリフレッシュできる。また、言葉の順序を入れ替えるレトリックも同じような効果がある。
- ブランドマークは、品質の優秀性を意味するにとどまらず、「当然高いもの」「ハイブロウな生活」という意味を持つ記号になった。
- たとえば満員電車でウォークマンを聞いているということは、外界からは孤立しているということを発信していることになる。
- 自然とは、人間の文化がつくった「コト」である。意味を与えながらそれをつくったのである。自然を読むとは、みずからがつくった意味と戯れているといっても過言ではない。
- 一家だんらんの場であっても、たとえばテーブルに並んだトロの刺し身、注いでくれる酒などにいろいろの意味が込められている。