R.P.ファインマン『科学は不確かだ!』岩波書店、1998年9月

科学は不確かだ!

科学は不確かだ!

■内容【個人的評価:★★★★−】
○1「科学の不確かさ」

  • この講演では、科学が他の分野に及ぼす影響を考えてみたい。
  • 今晩、僕が言おうとすることで17世紀の哲学者がとっく言っていないものなど、おそらく一つもないでしょう。しかし、人間の歴史を通じて多くの偉大な新しい考えが育ってきており、これを世代から世代へと明確な形で伝えていくことは必要なことである。
  • 科学の意味は三つに分けられる。
    • (1)ものごとを突き詰めるための特殊な方法
    • (2)いままで突き止めたことの知識の集成
    • (3)何かを突き止めた結果としてできるようになった新しいこと(科学技術)
  • 産業革命は科学の技術への応用である。こうした取り組みがなければ、膨大な人口を維持する食糧の生産、疾病のコントロール、奴隷を使わず、自由な人間により最大限の生産を行うことはできなかった。しかし、この力には、善に使うべきか悪に使うべきかの使用説明書はついていない。この領域は、科学者があまり知らない領域でもある。

○2「価値の不確かさ」

  • 人間が秘めているはずの素晴らしい可能性と、あまりにもちっぽけな実際の成果とを比べてみると、僕らはみんな情けなくなってしまいます。現在の夢の大半は、やっぱり過去の夢そのままなのです。
  • 歴史を通じて人間は何度となく袋小路に封じ込められ、どうにも身動きが取れなくなった時期がありました。人類が二度とそのような窮地に陥ることなく、常に動き、常に自由な方向に進む望みは、一に無知と不確かさを認めることにあります。

○3「この非科学的時代」

  • ほとんど何も知らなかったところから一変して、はるかに多くのことを知るようになったのですから、最も劇的な驚異の時代であることは一目瞭然です。ただし、科学が芸術や文学、人間の精神的姿勢や理解などに大きな役割を果たしていないという点では、僕は現代を科学的時代だとは思いません。

■読後感
現在、政府はこの書でいう「力があり、善に向けた諸活動を推進すると同時に、一方では人々を抑圧する存在」ではありえなくなっている。
「〜すべき」ではあっても「財力、人的力の側面からそれすらできない」、言葉を換えれば法律上の存在と経済上の存在は同時に成り立ち得ない状況となっている。